
経済産業省は、水素燃料電池を搭載したトラックやバスといった商用車向けに、燃料となる水素の購入費用を補助することを決めた。燃料電池車普及の「重点地域」とした6都県が対象となる。化石燃料との価格差を埋めることで、水素燃料電池車の普及を促進し、運輸部門の脱炭素化を促進する。
燃料電池車は、水素と酸素を化学反応させて電気をつくり、モーターを動かす仕組み。震動が少なく、走行中に二酸化炭素(CO2)を排出しない。また、電気自動車(EV)と比べて短時間で燃料を充填でき、走行可能距離も長い利点がある。長距離輸送で使うトラックなど、商用車に適しているとされている。
国はこれまで、水素を供給するステーションの整備支援に力を入れてきた。例えば、整備費や固定運営費に対し、それぞれ最大3分の2を補助している。これにより、水素ステーションを2030年までに1千基程度まで増やす目標を示している。
一方、水素燃料は、ディーゼルエンジン用燃料と比べると価格が高い点がネックになっている。民間事業者の負担抑制につなげるため、新たに水素1キロ当たり700円の補助も支給することにした。ディーゼル燃料と水素の価格差の4分の3程度に相当する。
経産省はこのほど、燃料電池商用車の導入や、水素ステーション整備を先行的に進める「重点地域」を発表した。燃料電池商用車の需要が見込まれ、地方公共団体の意欲的な活動が見られる地域を選定。東京、神奈川、福島、愛知、兵庫、福岡の6都県とその周辺地域が対象となった。重点地域には約90の水素ステーションがある。
日本は2050年のカーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)実現を目指している。運輸部門のCO2排出量は全体の約2割を占めており、脱炭素の取り組みを加速させることが欠かせない。
日本は運輸部門の脱炭素化には多様な選択肢が存在するとしており、燃料電池車もその一つと位置付けて普及を加速させる方針だ。