NECは6月9日、安心・安全・効率的なモビリティ社会を実現する技術として、コネクテッドカーや鉄道、ドローンなどの移動体に安定した通信を提供する、モビリティに適したAIによるマルチパス通信の最適化技術を開発したことを発表した。
技術の開発背景
モビリティ市場では、コネクテッド化、安全運転支援システムの高度化、自動運転の実用化が進む中で、安心・安全を確保するためにアプリケーションごとの品質を高信頼に保つモバイルネットワークが重要になっている。
しかし、モビリティサービスにおいては、場所・時間・移動状況において一度として全く同じ通信状況に遭遇することはなく、最適解を予測することは困難だった。
そのため、遠隔監視や車両制御など複数のアプリケーションにおけるすべての品質を高信頼に保つには不確定要素が多く、課題があったという。
今回発表された技術は、移動や輻輳によって時系列的に大きく変動する帯域を高精度に予測し、複数の車外通信を融合して車の通信要件(特性、優先度)に応じて最適に再分配することで、限られた帯域でも多様なサービスを効率的に収容しつつ、通信品質を確保することが可能となっている。
技術の特徴
技術の特徴としては、従来のモビリティサービスで実現が難しかったアプリケーションレベルの品質の充足度を高精度に予測し、コネクテッドカーなどの移動体側でリアルタイムにマルチパス通信の適切な経路を選択することを可能にしていることが挙げられる。
「応答性能」「QoE(Quality of Experience)」「コスト」「周辺環境」の4つの要素に基づく経路選択技術と時系列変動を考慮した高精度QoE予測技術により、高品質な通信を維持しつつ、収容効率を最大化するリアルタイムで切れ目のない通信を実現する。
さらに、遠隔監視、車両制御、エンタメなどアプリケーションごとの特性と、モバイル回線、衛星回線、Wi-Fiの回線特性に合わせた制御により、マルチアプリケーションを同時に利用した場合でもマルチパス通信の経路切り替えやハンドオーバー時の影響を最小限に抑えることが可能という特徴も兼ね備えている。
また、各エリアで収集した通信品質情報を基に、時系列変動を考慮した高精度QoE予測技術により、回線ごとのQoEを抽象化し、品質とコストを最適化する回線の組み合わせを導出することが可能。
モビリティ基盤側で、移動経路・環境条件・使用アプリケーションに合わせた経路選択が算出でき、RSP(Remote SIM Provisioning)などの技術と組み合わせることにより、エリアごとに最適な通信環境を構築することが可能になるという。
今後NECは、同技術を用いたソリューションの開発を進め、2025年度内に実用化することを目指す方針。