
知のプラットフォームをつくることが大学の大事な役割
「世界の様々な状況を見ていると、今ほど多文化共生や、共生、共存というものが求められている時代はないのではないか。
本学の教育精神『For Others, With Others(他者のために、他者とともに)』を追求し、他者に寄り添い、共にあり続ける大学でありたいと考えている」こう語るのは、上智大学学長の杉村美紀氏。
今年4月から上智大学の新学長に就任した杉村氏。1913年(大正2年)の大学創立以来、同大学では初の女性学長である。任期は2025年4月から2029年3月までの4年間。昨年9月、学長選任の報せはアフリカのエチオピアで聞いたという。
上智大学を運営するのは学校法人上智学院。その歩みの原点は、フランシスコ・ザビエルが日本に到着した1549年まで遡る。
カトリックの男子修道会であるイエズス会の創設メンバーの一人、フランシスコ・ザビエルが教育の重要性を説き、1913年に上智大学を設立したイエズス会の司祭たちに受け継がれていった。
当初は男子だけの大学だったが、1957年から女子学生の受け入れを開始。現在の学部学生数は1万2419人で、男子が4527人、女子が7892人(2025年5月1日時点)。今ではおよそ6対4の割合で女子学生の数が男子学生を上回っている。
上智大学は2025年5月1日現在、86カ国・地域の410大学と協力に関する覚書を締結。約1000人の学生が海外留学を経験し、全学生の約9%が外国籍学生で、その国籍は90余りにのぼる。
教員もおよそ6人に1人が外国籍の教員で、世界中の様々な国から学生や教員が集まっているのが特長だ。
「本学では常に学生を送り出したり、受け入れたりして、実質的な交流を継続している協定校が多い。大学は知のプラットフォームをつくることが大事な役割。国籍を問わず多くの学生が学び、知識を生み出し、文化を育み、それをまた各人が母国や第三国に持ち帰って、新たな発展につなげていくような交流を生み出したい」(杉村氏)
世界中が分断・分裂に苦悩する時代にあって、改めて、大学の役割とは何なのか。新学長の杉村氏を直撃した。