Axiosは5月28日(現地時間)、「AI jobs danger: Sleepwalking into a white-collar bloodbath」において、AnthropicのCEOであるDario Amodei氏がAIの進化によるホワイトカラー職への影響について警鐘を鳴らしていると報じた。

Amodei氏は、AIの進化が、大量の雇用喪失や社会的不平等の拡大を招く可能性があり、政府や企業はもっと真剣にこの問題に取り組む必要があると指摘した。

  • AI jobs danger: Sleepwalking into a white-collar bloodbath

    AI jobs danger: Sleepwalking into a white-collar bloodbath

今後5年でホワイトカラー職の50%が消失

Dario Amodei氏は元々OpenAIでVice President of Researchを務めており、OpenAIを退職後、2021年に元の同僚たちと共にAnthropicを立ち上げた。Anthropicは、AmazonやGoogleなどの大手企業から多額の投資を受けており、その評価額は600億ドルを超えている。

AnthropicはまさにAI技術の進化を牽引する企業の一つだが、同時にAIの安全性と倫理に関する研究・開発にも力を入れていることで知られている。例えば、同社の最新のAIモデル「Claude 4」では、ASL-3(AI Safety Level 3)などの高度なAI安全レベルの対策を実装し、リスクを最小限に抑えて安全性を最大化するための広範なテストと評価を行っているという。

Axiosによれば、Amodei氏はインタビューの中で、今後数年でAIがエントリーレベルのホワイトカラー職の最大50%を消失させ、失業率は10~20%に達する可能性があると述べているとう。特に、技術、金融、法律、コンサルティングなどの分野に対する影響が大きく、それらの業界では初級レベルの職種の雇用が大幅に削減されるかもしれないとのことだ。

政府や企業は対策を講じるべき

さらにAmodei氏は、政府や企業がこの問題に対して十分な対策を講じていないことに懸念を示し、透明性のある議論と政策の必要性を強調している。特に、AIによる自動化が進むことで、企業は人間の労働力をAIに置き換える動きを見せている。

この動きは、新たな雇用の創出を阻害し、結果として失業者の大幅な増加につながる危険性がある。Amodei氏は、このような状況は社会的不平等を拡大し、民主主義の基盤を揺るがす恐れがあると警告している。

最悪のシナリオを緩和する対策

Amodei氏は、最悪のシナリオを緩和するために次のような対策を提唱している。

  • 政府とAI企業は、労働市場の変化についてより透明性のある説明を行い、国民の意識向上を促進する
  • 労働者に、AIがどのように業務を補助できるのかの理解を促し、雇用喪失のペースを遅らせる
  • AIに関する合同委員会の設置や説明会の開催することで知識のある政治家を増やす
  • 超人的な知能が支配する経済のための政策的解決策について議論を始める

「トークン税」の導入を

また同氏は、「トークン税」と呼ばれる新たな税制の導入も提案している。これは、AIモデルの利用に伴う収益の一部を政府が徴収し、何らかの形で再分配することによって、AIによる富の集中を緩和するというものだ。

Amodei氏の警告は、AIの進化がもたらす可能性とリスクの両面を示している。もはやAIの進展を止めること自体は不可能だが、社会を守るには、AIの影響を制御しリスクを最小限に抑えることが重要である。