【厚生労働省】高額療養費の見直しなどが次官人事にも影響か?

高額療養費制度の見直しや年金制度改革法案への対応が、今夏の幹部人事に大きく影響を及ぼしそうだ。いずれも政権の命運を左右しかねない重要課題で、従来の年功序列ではなく、首相官邸の意向が強く反映される「政治主導型」の人事が避けられない。

 まず、就任から丸1年の伊原和人事務次官(1987年、旧厚生)は勇退が濃厚だ。昨年の衆院選で与党が過半数割れする中、医療や年金の負担増といった「不人気政策」をいかに実現させるかが期待されていた。

 しかし、2025年度予算の国会審議で高額療養費制度の自己負担上限額を大幅に引き上げる当初案が野党のやり玉に挙がった際の「修正対応がまずかった」との評価が省内外にある。

 子育て支援策に充てる財源確保として負担上限額引き上げにこだわるあまり、患者団体や野党の猛反発を招いた。結局、当初案の全面凍結に追い込まれ、省OBは「たった100億円規模の財源で石破政権に大きなダメージを与えてしまった」と手厳しい。

 後継の最有力候補は渡辺由美子こども家庭庁長官(88年、旧厚生)の名前が挙がる。渡辺氏は少子化対策の強化を盛り込んだ改正子ども・子育て支援法の成立に貢献するなど、安定した手腕に定評がある。

 一方、高額療養費制度の責任者である鹿沼均保険局長(90年、旧厚生)も交代が避けられない。同制度を巡る混乱の発端は、審議会の議論で患者団体からの意見聴取を行わず、負担上限額の大幅な引き上げを決めたことにある。

 鹿沼氏は将来の次官候補の1人だが、今回の問題では省内で「患者団体から決定プロセスに不信感を持たれた時点でアウトだ」と批判されている。後継には同期の朝川知昭政策統括官(90年、旧厚生)の名前が挙がる。

 今国会に提出予定の年金制度改革法案は、今夏に参院選を控えて会期延長できない関係で継続審議となる可能性がある。このため、間隆一郎年金局長(90年、旧厚生)は続投の見通しだ。

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