トランプ・ショックを乗り切る新たな仕組みづくりを

米覇権体制の終焉

 米覇権体制の終焉、新しい国際秩序をどう構築するか――。世界中が米トランプ政権の関税政策に振り回されている。ただ、米国自身も、株安、米債券安、ドル安の”トリプル安”に直面し、インフレも進んでいる。これまでトランプ支持だった庶民層による反発も出始めているが、トランプ氏は強気な姿勢を維持している。

 先の大戦の終戦を迎えた1945年から80年が経つ。米国は世界最強の経済力と軍事力を主軸に覇権を確立。国連(国際連合)設立を主導し、米ドルを基軸通貨とする自由貿易体制を推進。1991年に旧ソ連邦が崩壊すると、これまでの米ソ2強体制から米国一強体制となった。しかしこの間、米国自身も国力を相対的に低下させ、世界は多極化の方向を辿り始めたという今日までの歩みがある。

 とはいえ、米国のGDPは全世界の約25%を占めており、米国抜きの国際貿易は考えられない。だが、米国は自由貿易主義、民主主義、法の支配という自ら築き上げた価値観を自ら壊そうとする矛盾だ。

日本の使命と役割

 米大統領選挙でトランプ氏は勝利し、「ウクライナ戦争を1日で終わらせる」と豪語。しかし、約5カ月たった今、停戦合意は進まず、一般市民が死傷する日々が続く。

 この混沌下をどう生き抜くかという命題。産業界では米国離れも進む方向でインドに半導体工場を建設したり、アイリスオーヤマのように日用品を米国内で生産する地産地消戦略をとる動きが相次ぐ。

「国のカタチをどう構築するかが問われている」とは国際政治の専門家の弁。『共助資本主義』で企業と企業が互いに自分の強さを補完し合う動きも出現。「生き方や働くことの意義が問われている。国力は人間の力。世のため、人のために生きるという価値観で新しい秩序を構築する時」と同氏は語る。

 今は政治、行政、経済の各領域が1つにまとまり、世界の共存を見据えた『国のカタチ』をつくる好機。諦めず、しなやかに、そしてしたたかに基本戦略をつくる必要がある。

【トランプショックにどう立ち向かうか】《識者はこう見る》元防衛大臣・森本敏