【トランプ・ショック】世界経済の不確実性増す中、 投資の目利き力問われる総合商社

米トランプ政権の関税政策を受け、世界経済の不確実性が増している中、著名投資家ウォーレン・バフェット氏が株式の長期保有を公言する総合商社の対応策が改めて注目されている――。

「当社の事業会社群は国内で強い。国内の骨太事業会社の成長が海外の貿易戦争が与える影響を打ち消せると思っている」

 伊藤忠商事社長の石井敬太氏はこう語る。伊藤忠商事の今期(2026年3月期)業績は純利益が9000億円(前年同期比2.2%増)となる見通しで、2期連続の最高益を更新する。三井物産は7700億円(同14.5%減)、三菱商事は7000億円(同26.4%減)の見通しだ。

 もっとも、今後は円高が業績の下振れ要因になりかねない。伊藤忠は前期の平均レートが1ドル=152円だったが、今期は140円と想定。1円の為替変動で純利益に与える影響は31億円。トランプ関税で約400億円の景気後退リスクを見込む。

 三井物産も今期は1ドル=140円を前提とし、1円の為替変動で41億円の影響があると想定。ただ、米国は自動車・トラックや天然ガスなど、国内完結型事業が中心だとし「関税の直接的な影響は相対的に小さい。事業環境の変化への感度をさらに高め、機動的な守備策を講じていく」(堀健一・三井物産社長)。

 また、三菱商事社長の中西勝也氏は「従来、コンペティターとなっていたPE(プライベートエクイティ=未公開株)ファンドが投資を控える案件もポツポツ出てきており、事業機会が増えるのではないか」と指摘。新たな投資機会を模索している。

 世界が混乱する中で、成長機会をいかに見出していくか。各社の目利き力が試されそうだ。

BNPパリバ証券チーフエコノミスト・河野龍太郎が考える『トランプ関税の帰結』