西日本電信電話(以下、NTT西日本)は5月9日、2024年度の決算について説明会を開いた。営業収益は対前年283憶円減の1兆4686億円、営業利益は同571億円減の818億円と、減収減益となった。なお、業績予想に対しては、営業収益が236億円、営業利益が18億円それぞれ上回る結果となり、いずれも計画を達成した。
代表取締役社長の北村亮太氏は「2024年度は固定音声収入の減少に加え、2023年度のノンコア資産の売却など一時的要素の反動や、将来の成長に向けた先行施策の影響により減益となった。2025年度も固定音声収入の減少は継続するものの、成長事業の拡大や不断のコスト改善などにより(追加の先行施策を除き)対前年増益を目指す」と、展望を示した。
利益成長軌道に向け通信事業を維持・拡大
2025年度の利益成長軌道への転換として、同社はまず通信事業の維持と拡大を図る。光サービスは10ギガ(Gbps)インターネット接続サービス「フレッツ光クロス」の販売拡大とCX(Customer Experience:顧客体験)向上により、純増数とARPU(Average Revenue Per User:ユーザー当たりの平均売上高)を拡大し、施設数のシェア下げ止めと回復を目指す。
また、ビジネス向けネットワークではパートナーとの連携や直営業によって新規開拓とサービストランスファーを強化し、IWAN(Interconnected WAN:最大100Gbpsまでの高速大容量かつ高信頼のネットワークを、NTT西日本エリアであれば距離や利用エリアによらず一律料金で利用可能なサービス)などの増収を目指す。
法人事業は中堅・中小企業向け情シス支援など新サービスを展開
地方自治体や中堅・中小企業においてはICT環境の導入と運用の高度化、人材不足などにより、デジタル化にかかわる課題が顕在化している。これに対し、NTT西日本はマネージド型サービスやMC-SOC(Managed Cloud Service Operation Center)など運用センターの充実により、クラウド化からオフィス内のICT環境整備までトータルにサポートする体制を強化する。2025年度の法人事業においては対前年比で収益・利益共に10%拡大を目指す。
ときに「一人情シス」や「ゼロ情シス」などと呼ばれるように、中堅・中小企業においては専門人材の不足が顕著だ。そこで同社は10月より、IT資産管理やセキュリティ対策、デジタルツールの導入による生産性向上をサポートする「情シスおまかせサポートサービス(仮称)」の提供を開始する。6月には先行販売を開始するという。
人材不足への対応として同社は生成AIサービスの提供も強化し、2027年度には生成AI関連サービスで100億円規模のビジネスを創出する。先行してグループ会社のNTTスマートコネクトが提供開始した生成AIサービスでは、勉強会や生成AIを使う人材の育成から、利用ログの分析、プロンプトエンジニアリング支援など、導入から運用までをトータルでサポートしている。
新規サービスでは電子書籍アプリや自動運転を拡大
新規サービスとしては、電子書籍配信サービス「コミックシーモア」や北米向けの「Manga Plaza」などが売上を拡大している。2025年度はコミック制作からライセンス展開までトータルに強化しつつ、少年漫画など作品の拡充も進める。2027年度までに1000億円規模の売上を目指す。
さらなる新規事業の拡大に向けては、自動運転EVバス事業にも注力。2024年8月に仏Navya Mobilityへの出資を完了し、EVバスのレンタルから運行設計、システムの保守・運用サポートまで提供できる体制を整えた。
2024年度は12自治体と実証実験を実施した。2025年度はさらに実証自治体を拡大し、20自治体での導入を目指す。北村氏は「公共交通の維持という地域課題を解決できるよう、事業性を確保し自動運転の社会実装を進めたい」と話していた。
DXにより顧客体験と従業員体験を向上
同社主力事業の回線サービスや通信サービスは、依然として人手を介した事務手続きやアナログな業務が多い。こうした業務オペレーションをDX(デジタルトランスフォーメーション)により刷新し、時間や場所を問わない手続きを実現することで顧客体験および従業員体験の向上を図る。
具体的には、Web注文比率60%、10分以内の申込完結、フロースルー(業務プロセスの最初から最後まで自動的にデータが流れるデジタル化)率60%を目指す。