
地域金融機関の市場に…
「我々メガバンクグループとは、中小企業のお客様に、その成長をサポートするようなサービスが提供できてきたのか?という自省がある」と話すのは、三井住友フィナンシャルグループ(FG)社長の中島達氏。
4月15日、三井住友FGはグループの三井住友銀行、三井住友カードと連携して、法人向けデジタル総合金融サービス「Trunk」の提供を5月から開始することを発表した。
同社はすでに23年から個人向けのデジタルサービス「Olive」を展開し、足元で500万の顧客を獲得している。この「Olive」で培ったノウハウを生かし、今回の法人向けサービスの開発も進めてきた。
その特徴は、メガバンクで初めて、最短で翌営業日にはネット口座開設でき、ネット銀行と同等の、業界最低水準の手数料で利用が可能であること。
それ以外にもファイナンス、VISAと連携したビジネスカード、決済プラットフォ―ム、法人口座、経理のDX化を実現。そしてこのサービスにAI(人工知能)の技術も取り込んで、利便性を高めている。
中小企業は「社長が営業、経理、資金調達まで社長が1人で担っているという方も多くおられる」(三井住友カード社長・大西幸彦氏)という現実がある。全産業的に人手不足が叫ばれる中、これらの業務をデジタル化するとともに、銀行店舗に人を送らずに済む。
「Trunk」は従来、三井住友FGが顧客ターゲットとしていなかったサイズの小さい事業者を狙ったもの。「そのお客様を戦略として取り込んでビジネスを展開する。戦略的に非常に大きな意味がある」と中島氏。
いわば地域金融機関や、ネット銀行がターゲットにしていた顧客層を、三井住友FGが自社にとって新たな市場として取りに行こうというもの。
かつて中小企業向け融資「ビジネスセレクトローン」を展開し、この市場を開拓しようとした時期もあったが、融資が焦げ付くなど苦い経験もした。その与信も、テクノロジーの進歩でリスク管理も高度化が進んでいる。
三井住友FGの新サービスは、日本の金融業界が新たな競争ステージに入ったことを示している。