日立製作所は4月28日、2025年3月期(FY2024)通期の連結決算(国際会計基準)を発表した。売上高に当たる売上収益は前年比0.6%増(Astemo除く3セクターの実績は14%増)の9兆7,833億円、当期利益(親会社株主帰属)は前年比4.4%増の6,157億円と、増収増益で着地した。

同日の決算発表会に登壇した執行役専務 CFO(最高財務責任者)の加藤知巳氏は「2024年度はAstemoを除く3セクターで増収増益を達成した。国内IT市場においてDX(デジタルトランスフォーメーション)やモダナイゼーションの追い風を受け、デジタルシステム&サービス(DSS)が大きく成長した」と説明した。

  • 日立製作所 執行役専務 CFO(最高財務責任者) 加藤知巳氏

2025年3月期(FY2024)通期の実績

2025年3月期通期は、Adj. EBITAが1兆1,465億円(前年比24.4%増)、Adj. EBITA率が11.7%(同1.7ポイント増)、コア・フリー・キャッシュ・フロー(コアFCF)が7805億円(同2091億円増)、ROIC(Return on Invested Capital:投下資本利益)が10.9%(同2.2ポイント増)となった。Adj. EBITA率とコアFCFは過去最高を達成し、ROICは初めて10%台に乗せた。

2024年中期経営計画の目標(売上収益、Adj. EBITA率、EPS成長率、コアFCF、ROIC)も成長戦略とキャッシュフロー重視の経営方針により、コアFCFとROICの改善を実現し、ほぼ達成した。

  • 2025年3月期(FY2024)通期の実績

2026年3月期(FY2025)の見通し

加藤氏は「2025年は過去最高の水準を出発とする」と述べ、米国相互関税を受けて世界経済の不透明性が拡大する中、DX/GX(グリーントランスフォーメーション)のモメンタムは中長期で変わらないとし、DSSおよびエナジー・モビリティの継続的な成長により、戦略投資の増額と関税影響を想定したリスクを織り込むが、増収増益の見通しと説明した。

FY2025の業績見通しは売上収益を10兆1,000億円、Adj. EBITAを1兆1,100億円、Adj. EBITA率を11.0%、当期利益(親会社株主帰属)を7,100億円、コアFCFを6,400億円、ROICを11%としている。

米国相互関税の影響としては、FY2025業績見通しに対し、直接影響の想定リスクをAdj. EBITAで300億円、当期利益で350億円が織り込まれている。加藤氏はリスクが予想される主な事業として、米国のパワーグリッド、計測分析システム、インダストリアルプロダクツ&サービスを挙げた。関税対策として、これらの事業においてサプライチェーンの見直し、米国内での生産などに取り組む。

  • 2026年3月期(FY2025)通期の見通し

セグメント別業績

日立はデジタルシステム&サービス(DSS)、グリーンエナジー&モビリティ(GEM)、コネクティブインダストリーズ(CI)の3つのセグメントに分けて業績を発表。

FY2024年のセグメント別業績は、DSSが2兆8,325億円、エナジーが2兆6,270億円、モビリティが1兆1,713億円、CIが3兆2,803億円、その他が4,975億円だった。対するFY2025の見通しは、DSSが3兆200億円、エナジーが2兆8,100億円、モビリティが1兆11,900億円、CIが3兆2,803億円、その他が4,850億円としている。

国内の売り上げが多いDSSのフロントビジネスは、国内のDX/モダナイゼーションを中心とした大口案件の確実な遂行と、Lumada事業の拡大により、増収増益の見通し。

同社が注力しているLumada事業は、FY2024の売上収益が3兆210億円(売上収益比率31%)だったのに対し、FY2025は3兆9,000億円(同38%)の見通しとして、前年以上にLumada事業に対するアクセルを踏む構えだ。