花王は、地下トンネルなどでよくみられる鉄バクテリアに由来するサビ色の汚泥(沈殿物)を、簡単かつ短時間で除去できる除去剤の開発に成功したことを発表した。
土壌に幅広く存在する鉄バクテリア
鉄バクテリアは土壌中に広く生息する無害の微生物。鉄を酸化してエネルギーを得る過程で、サビ色の沈殿物(酸化鉄)を生成することが知られ、鉄分を含む自然の川や地下水など水中の鉄分を餌にして多量の汚泥を生じさせることが知られているほか、河川や水たまりの表面にギラギラと光る油膜のような鉄の酸化被膜という薄い膜を作りだすことも知られている。
また、古来より日本では赤色顔料「ベンガラ」の原料(酸化鉄など)として活用されてきた一方で、そうした鉄バクテリアの活動によって発生する汚泥は、景観を損ねるだけでなく、柔らかい粘土のような半固形状のため、水をかけただけでは落とすことができず蓄積して排水溝を詰まらせることで周辺設備の故障や劣化などの悪影響を及ぼすこともあるため、定期的に人の手による除去作業を行う必要があったという。
汚泥の構造を壊す成分を選定、製品化
今回、花王は先行研究より分かっていた鉄バクテリア汚泥が泥の粒子が集まって網目のようなネットワーク構造を形成していることを踏まえ、ネットワーク構造を断ち切れば、形を保てずに軟らかくなると推測、汚泥に作用して構造を壊す成分の選定を進めたという。
また、そうした成分を含みつつ発泡する仕組みを加えることで軟らかくなった汚泥を浮き上がらせ、水で流すだけで汚泥を除去できる産業用除去剤「ルナクリア(TB-100)」の開発にも成功したとする。
鉄バクテリア汚泥除去剤「ルナクリア」の洗浄比較
鉄道会社が地下トンネル向けに採用を決定
ルナクリアの製品化にあたっては、天然由来の原料を用いることで環境への配慮も設計に加味したほか、地下トンネル内はスペースが限られていることから、作業員が手動で使用できるように、花王の日用品でも使用しているフィルム容器(ラクラクecoパック)を採用しつつ、専用のデバイスも開発。この仕様にすることで、軽量で持ち運びや使い勝手に優れているだけでなく、プラスチック使用量の削減にもつなげたとする。