JR東日本は、きっぷやSuicaのいらない「ウォークスルー改札」の実証実験を、2025年秋ごろに上越新幹線で実施する。新潟駅と長岡駅に、顔認証技術を用いた改札機を各1台設置し、2026年春ごろまで評価する予定。この実験にはJR東日本とJR東日本メカトロニクスに加え、NEC(日本電気)、パナソニック コネクトも参加する。
ウォークスルー改札では、従来のように改札機にきっぷを投入したり、Suicaをタッチしたりといった操作が必要なくなるため、両手に大きな荷物を持つ人や、ベビーカーなどを利用する人なども、改札を通りやすくなるという。海外からの訪日客もウォークスルー改札を利用できるよう開発を進める。
実証実験の主な評価項目は以下の通り。
- 改札機における顔認証技術の精度確認
- 機器設置環境(照度、カメラ角度、温湿度環境など)に関する実証確認
- 改札機を通過する「歩行者の速度」「カメラと歩行者の距離」や改札機と顔認証センサーの連動確認など
今回の実証実験では、メーカーや設置方式が異なる2種類の顔認証改札機を導入する。
新潟駅に設置する顔認証改札機はNEC製で、既設の改札機に顔認証装置を上から被せる方式。NECでは「既設の改札機を有効的に活用しつつ、短期間でスムーズに設置できる」と説明している。
長岡駅に設置する顔認証改札機はパナソニック コネクト製で、既存の改札とは異なる“未来への期待感を与えるデザイン”を採用。“映像、照明、音響を連動させた旅のワクワク感を与える演出”が可能な点もポイントとして挙げている。
パナソニック コネクトでは「世界最高水準の顔認証技術と顔認証改札機の納入実績・開発ノウハウを生かし、自然な歩行で認証できる手ぶらでストレスフリーな改札」を追求したと説明。画像解析技術を活用した“なりすまし対策機能”の検証も行う。
今回の実験のモニター参加者は、新潟駅と長岡駅の間の新幹線定期券(Suica FREXまたはSuica FREXパル)を持つユーザーの中から募集する。実証実験の詳細やモニターの募集方法などは、2025年夏ごろに案内予定。長岡駅でモニターの受付登録を実施し、その際に顔写真の撮影なども行う。提供された顔画像を含む個人情報は、JR東日本の個人情報取り扱いに関する基本方針に基づき、JR東日本が管理する。
今回の実証実験の結果を受け、今後はまず新幹線で、顔認証による実証実験の対象を拡大予定。たとえば「大人の休日倶楽部」といった特定会員を対象に実証実験を行い、その後に「新幹線eチケット」のユーザーを対象とした実証実験を行うことを検討している。対象の拡大に合わせ、エリア拡大も検討する。
JR東日本では、中長期ビジネス成長戦略「Beyond the Border」に基づき「Suica Renaissance」(スイカ・ルネッサンス)を2024年12月に発表。「改札はタッチ」という、当たり前になった概念を超えるサービスの実現に向け、顔認証以外も含めて、さまざまな方式によるウォークスルー改札の検討を進めている。2027年春頃には顔認証以外の技術を活用して在来線で実証実験を行い、今後10年以内にウォークスルー改札の実現をめざすとのこと。