4月1日に全国の各企業で入社式が開催され、新入社員が社会人の第一歩を踏み出した。コロナ禍など先行きが見えにくい社会で学生時代を過ごしてきた新人たちに、各社のトップが贈った言葉を紹介しよう。ここでは日立、セイコーエプソン、富士フイルムビジネスイノベーション、内田洋行の4社が公開した、入社式の訓示を抜粋して取り上げる。

  • 日立製作所の2025年度の「キャリア・キックオフ・セッション」の様子

日立製作所 德永CEO「『真のOne Hitachi』実現で社会貢献を」

2021年度から「入社式」という名称を使わず、「キャリア・キックオフ・セッション」と呼称する式典を開いている日立製作所。

執行役社長 兼 CEOの役職に就任したばかりの德永俊昭氏は、3月28日に発生したミャンマー中部を震源とする地震被害に対して可能な支援を最大限実施していることを紹介した上で、830人の新入社員に向けて以下のスピーチを行った。

  • 日立製作所の德永俊昭社長 兼 CEO

「日立の変革はこれからが本番です。現在の日立は、それぞれの事業が個々に独立して利益を出せるようになりました。しかし私は、日立グループが持つさまざまな事業を掛け合わせて、日立独自の価値を提供することにより、まだまだ大きな成長余地があると考えています。日立グループは、AIをはじめとする『IT』、制御・運用技術である『OT』、そして送配電網や鉄道車両などの『プロダクト』を併せ持つ、世界でも類をみない企業です」(德永CEO)

「地政学的リスクの高まりや生成AIをはじめとするテクノロジーの台頭など、解くべき社会課題が複雑化しているなか、私たちが社会に貢献し続けるには、幅広い事業をデジタルで繋ぎ、グループ一体で新たな価値を提供する『真のOne Hitachi』、これに私たち自身をトランスフォームしていく必要があります」(同)

「この変革は、様々な事業が独立性高く集まった『コングロマリット、複合企業』として100年以上にわたって歩んできた日立にとって、実は、非常に大きな挑戦です。そして、こちらに集まっている皆さん全員が、今日から共にこの変革をリードする、大切な仲間です。私はそのような思いを、今日のキャリア・キックオフ・セッション(Career Kickoff Session)のテーマである『Leading X!』に込めました。“X”は、ご存じの通り『トランスフォーメーション』の略です。皆さん一人ひとりが『デジタルをコアにした真のOne Hitachi』の実現を通じて、今後も社会に貢献していく日立のトランスフォーメーションジャーニーの一員なのです」(同)

セイコーエプソン 𠮷田社長「これからの経験にムダはひとつもない」

セイコーエプソンも、この日就任したばかりの𠮷田潤吉新社長が、長野県諏訪市の本社で開催された入社式に登壇。307人の新入社員を前に行ったスピーチでは、仕事を通じてチームで成果を生み出していくにあたって意識してほしいキーワードとして、「プロフェッショナリズム」と「オーナーシップ」のふたつを挙げた。

  • セイコーエプソン 𠮷田潤吉新社長

「どんなにテクノロジーが進んでも、メーカーとして製品を作ってお客様にお届けする以上、必ず物理的なモノの動きがグローバルに発生し、人と人との共同作業が必要になってきます。お互いに協力して成果を生み出していくことを、チームで働く、と私たちは言っています。これから皆さんはチームエプソンの一員になるわけです」(𠮷田社長)

「仕事を通じてチームで成果を生み出していくことが求められますが、その時にぜひ意識してほしいキーワードがふたつあります。それは、『プロフェッショナリズム』と『オーナーシップ』です。このふたつのキーワードは、それぞれに強いエモーショナルな要素が内在しています。『プロフェッショナリズム』は、仕事に対する誇り、『オーナーシップ』は、仕事に対する情熱です。これによって仕事をする上でのモラルも維持できると思います」(同)

「これから仕事を始めると思い通りに行かないことがたくさん出てくると思います。そういう時は、そこで投げ出したり、あきらめたりせず、この諺を思い出してください。人間万事塞翁が馬。皆さんがこれまで、そしてこれから経験することに無駄なことはひとつもありません。本人の自覚次第で必ずすべての経験がこれからの皆さんを創り上げる糧になります。志を常に高く持って常に最善を尽くせばきっと道は開けます」(同)

富⼠フイルムBI 浜CEO「⼀⼈ひとり思い切った挑戦を」

富⼠フイルムビジネスイノベーション(富⼠フイルムBI) 代表取締役社⻑・CEOの浜直樹氏は、4月1日に発表した「新入社員歓迎の辞」のなかで、以下のように述べている。

「2021年に富⼠フイルムビジネスイノベーションへ社名を変更して以降、新たにビジネスを展開した国は40カ国を超えます。また、事業基盤強化を⽬的としたM&Aや合弁会社の設⽴を積極的に進めており、ソリューション・サービスの提供体制も⼤きく強化したことで、お客様の幅広い課題を解決できるようになりました」(浜CEO)

「お客様のビジネスに⾰新を起こし続けることが当社の使命であり、そのためには、価値ある商品・サービスを常に⽣み出していくことが重要です。新しい技術が次々と登場する中、それらを積極的に取り⼊れるとともに、富⼠フイルムグループが有する独⾃のIT・AI 技術を活⽤することで、お客様の成⻑に寄与するイノベーションの創造に取り組んでいます」(同)

「イノベーションの実現には、多様な価値観を持つ従業員⼀⼈ひとりの斬新な発想や成し遂げたいという熱い思いが⽋かせません。若い皆さんの⼤胆かつ柔軟な発想は⼤きな武器であり、アイデアを具現化するために、挑戦し続けることを期待しています」(同)

「会社⼈⽣の中では、仕事がうまくいかない時や、⾃分の思い通りにいかない時に、悩むこともあると思います。しかし、下を向いていても何も始まりません。⾃分を信じて前向きに取り組んでください。困難に⽴ち向かって努⼒した経験は、間違いなく皆さんの⼒となり、その後のキャリアに⽣かされるでしょう。⼀⼈ひとりの思い切った挑戦が、富⼠フイルムビジネスイノベーションの未来を切り拓く原動⼒なのです」(同)

内田洋行 大久保社長「我々の使命は、知恵やデータを価値ある形に変えること」

内田洋行は東京・新川本社で入社式を開催。代表取締役社長の大久保昇氏は、66人の新入社員と向き合い、「『人とデータの時代』に向かって」と題した祝辞を贈った。

  • 内田洋行新川本社での入社式の様子。中央が大久保昇社長

「現在、私たちを取り巻く環境は、DXだけではなくAIX(AIトランスフォーメーション)の進化によって大きく変わろうとしています。しかし、その本質は115年前の創業当時から変わりません。時代を超えて、『人とデータ』で価値を創造していくことが内田洋行の原点です。私たちの使命は、人の持つ知恵や社会の様々なデータを、価値ある形に変えていくことなのです」(大久保社長)

「今日から皆さんは、私たちとともに『新しい社会をつくる仕事』に取り組む仲間です。私たちのビジョン『情報の価値化と知の協創をデザインする』は、お客様のもつ情報や知見をもとに、共に考え、共に創り上げることで、より価値あるものに高めていくことです。115年受け継がれてきた私たちの理念を胸に、一緒に挑戦を続けていきましょう」(同)

  • 内田洋行 大久保昇社長