4月1日、多くの日本企業が新入社員を迎え、入社式を行った。物価高、人手不足など、さまざまな問題を抱えている現在の日本で新たなスタートを切った新入社員に日本企業の社長はどのような言葉を贈ったのだろうか。
本誌は、入社式第1弾として、パナソニック、NEC、シャープのCEOが入社式で新入社員に向けて語った言葉をお届けした。
本稿は第2弾として、入社式の取材を行った電通、IBM、日本製鉄、リコーに加え、NTT、ソフトバンク、IIJのトップが語った入社式の訓示を紹介しよう。
電通・佐野社長「AIに代替できない可能性の塊」
電通は4月1日、新入社員入社式「Day One Ceremony 2025」を本社ビルの電通ホールで開催。2025年度の新入社員は148人(男性71人、女性77人)だった。
入社式は電通オーケストラ部と合唱部による社歌の演奏か開始。その後、新入社員一人一人を紹介する紹介動画が投影された。
電通 代表取締役 社長執行役員 佐野傑氏は、以下のように、新入社員に向けて歓迎のスピーチを行った。
「昨年来、『AI』の進化が大きな話題となっていますが、AIに代替できない『人』の力がこれまで以上に重要になると確信しています。これからのAIの時代にこそ、私たちが活躍できる領域はさらに拡大し、果たすべき役割はより重要になってくると考えています。そのような時代において、皆さんは『可能性の塊』です。自らそれを減じることなく、電通で仲間と共に広げていってください」
IBM山口社長「答えがないものに果敢に挑戦を」
日本IBMは4月1日、東京ビッグサイトで「New IBMers Kickoff 2025」と題して入社式を行った。対面形式の入社式は2019年以来、実に6年ぶりとのこと。テーマは「Set Sail! 高鳴る鼓動を風に乗せ未知なる海へ」で、新入社員778人それぞれの夢やパーパスを実現する新たな航海の始まりを表現している。
日本IBM 代表取締役社長執行役員の山口明夫氏は、新入社員へのメッセージとして、「IBMの社員が何を考えているのか共有します。現在、テクノロジーの進化は人類が経験したことのないスピードで加速しており、解決できない問題や、新しいことを実現できる可能性を実感する時代にいます。将来的に大きく変化した時代と位置付けられるでしょう」と述べた。
また、山口氏は「答えがないものに果敢に挑戦し、解決策を自分たちで作り上げる人になってほしいですし、社会の課題など明るい未来に向けて何をしなければならないのか、あるべき姿を追い続けてほしいです。私たちが存在する意義、日本IBMが存在する意義は少しでも人の役に立つことです。そのために、仲間と一緒に働いてください。今後、社内で“Think”というキーワードを多く目にすると思いますが、さまざまなことを考えることでステップアップし、楽しく前向きに挑戦してください」と、新入社員を激励した。
日本製鉄・今井社長「海外でも活躍できるように研鑽を」
日本製鉄は4月1日、都内本社で入社式を開催し、総合職の245名(うち女性は59名)に入社辞令を授与した。代表取締役社長兼COO 今井正氏は「当社は今後、グローバル事業をさらに強化していきます。皆さんも将来、海外でも活躍できるように今から研鑽を積んでください」と新入社員に語りかけた。
今井社長は、「今後当社は3つの課題に直面する」と述べ、その解決に向け、「社会の変革期において産業構造が変化するなかで、材料分野においても新たな需要が生まれます。そこに新たなビジネスチャンスがあります。製造業の本分を忘れず、当社の技術力を活かして新たな成長を目指し、積極的にチャレンジしていきましょう」と力強く語った。
2つ目の課題であるグローバル展開については、インド、アセアン、北米を中心に“一貫製鉄事業”を拡大する新たな段階に入ったとし、新入社員にもグローバル企業の一員としての活躍を期待すると述べた。
3つ目の課題である気候変動問題に対しては、「グローバル経済と地球環境の双方において、社会に欠かせない存在になれるように進んでいきましょう」と、新入社員に呼びかけた。
なお、CMに出演している女優の川口春奈さんがスペシャルゲストとして登壇し、新入社員と交流する時間も設けられた。
リコー大山社長「顧客が『"はたらく"歓び』を感じられる手伝いを」
リコーは4月1日、都内本社で入社式を開催し、119人の新入社員を迎えた。コロナ禍で始まった経営層との1 on 1パートを残しつつも、集合形式で対面ならではのコミュニケーション充足も図った。
2025年度入社式のコンセプトは「UNITE」。同期との一体感を感じられることを狙ったという。新入社員が会社に到着すると、先輩社員とリコーブラックラムズ東京のマスコットキャラクター「ラムまる」がウェルカムロードを作って出迎えた。
代表取締役 社長執行役員の大山晃氏は、新入社員に向けて、リコーグループが大切にしている2つのことについて語った。
「まずはリコー創業の精神である『三愛精神』です。創業者の市村清が、人を愛し、国を愛し、勤めを愛す、という三愛の精神を提唱しました。今でも、私たちがさまざまな判断をするときの原点として、経営理念に受け継がれています」
「『人を愛す』とは、リコーに関わる全ての人の幸福を考えることです。社員やお客様、パートナー企業、株主、事業所周囲の地域の方もです。リコーを支えてくれる方々と共に幸福になることを目指すべきです。『国を愛す』とは、自分たちが属する社会を愛するということです。今の時代では"地球を愛する"と解釈しても良いと思います。『勤めを愛す』とは、熱意と責任感を持って主体的に仕事に取り組むことで、充実感や達成感を得るということです。勤めを愛することこそが『"はたらく"歓び』につながります」
「当社が大切にしている2つ目は、『お客様の"はたらく"に寄り添い続ける』ことです。これは、お客様に貢献し続けるという決意表明であり、当社の進化を支える基本動作でもあります。お客様の働き方が多様化する中で、はたらくに寄り添い続ける当社は、お客様へのお役立ちの手段を変化させてきました。今はデジタルテクノロジーを使ったサービスを強化しています」
NTT島田社長「共に創るということを意識して」
NTTの代表取締役社長の島田明氏は、入社式で新入社員に対し、同社社員として心がけてもらいたいことが2つあるとして、以下のように語った(一部抜粋)。
一つ目は、皆さんの研究費や給与は誰からもらっているのか、考えてほしいと思います。
研究費や給与は、お客さまに提供した商品やサービスの対価として、お客さまから頂いたものです。誰のために研究開発をしているのか、それはお客さまのためであり、社会のためであるということを自覚してください。
NTTの研究者が大事にしている言葉として、NTT 研究所の前身である電気通信研究所の初代所長である吉田五郎の言葉があります。それは、「知の泉を汲んで研究し、実用化により世に恵を具体的に提供しよう」という言葉です。この武蔵野研究開発センタに石碑として刻まれています。大事なことは「実用化により世に恵を具体的に提供しよう」です。自身の研究がお客さま、そして、これからの社会にどのような価値を生み出すかを考えながら、挑戦を続けてほしいと思います。
二つ目は、共に創るということを意識してほしいと思います。 研究開発は一人で行うものではありません。上司や同僚、事業会社、パートナーと知識や技術を共有し、互いに刺激し合いながら、より大きな成果を目指してください。
世界の変化は激しく1つの企業や組織だけでこの変化に対応していくことは難しくなってきています。先ほどお話しした IOWN の推進にあたっても、NTT 単独で実現できるものではありません。IOWN グローバルフォーラムを立ち上げ、国内外 156 のパートナー企業や団体の皆さまと連携して、目指す未来の実 現に向けて取り組んでいます。皆さんも、研究所内の様々なチームはもちろん、お客さまや社内外の人々と連携し、共に創る「共創」を心がけてください。
ソフトバンク宮川社長「AIに向けて経営資源(ヒト・モノ・カネ)を集中投下」
ソフトバンクの2025年度の入社式で、代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川 潤一氏は、新入社員479人に向けて、「AIに向けて経営資源(ヒト・モノ・カネ)を集中投下」するとして、次のように語った(一部抜粋)。
これからの時代はAI(人工知能)です。AIに向けて経営資源(ヒト・モノ・カネ)を集中投下していきます。OpenAIのモデルは、2018年に発表されたGPT-1からGPT-2、GPT-3までの約3年間はテキストを生成するフェーズでしたが、次の3年間はコード生成や画像認識、画像生成、音声認識などができるようになりました。そして、2024年にブレークスルーが起こったと考えています。音声を生成できるようになり、コールセンターの自動化が可能になりました。高度な推論や動画生成など、いろいろなシリーズが出てきましたが、特に今年はAIエージェントです。ソフトバンクグループでは、「クリスタル・インテリジェンス(Cristal intelligence)」を展開していこうとしています。AGI(汎用人工知能)の到達も今年中だと言われていますが、皆さんはそのような年に入社しました。
知識系では、GPT-3.5からスタートしたOpenAIも、GPT-4、GPT-4oと知識を積み重ねてきました。それに加えて推論モデルのoシリーズが出てきて、OpenAI o1、OpenAI o3と進化してきました。これからGPT-5が出てくるとされています。
ソフトバンクグループは、OpenAIとクリスタル・インテリジェンスを開発していきます。OpenAIおよびソフトバンクグループの合弁会社として「SB OpenAI Japan」を設立し、ソフトバンクの連結子会社として事業を行っていく予定です。新会社は手挙げ方式で人材を募集しようと考えているので、われこそはという人はぜひチャレンジしてほしいと思います。
AIエージェントにより何がどう変わるのでしょうか。例えば人間はAIエージェントに打ち合わせの設定を依頼するだけで、予定の調整や会議室の予約、スケジュールの通知をAIエージェントが自律的に行ってくれます。組織も同じで、AIエージェントが浸透すると、今までの企業や組織の常識は大きく変わっていくと予想しています。管理職は必要なくなるかもしれませんし、10年後、20年後の会社の組織は一体どうなるのか分かりません。すべて自律化された「ひとりユニコーン」が登場するかもしれません。
ソフトバンクは、次世代社会インフラの構築を目指しています。AIとの共存時代を見据えて、AI時代を支えるインフラを構築している最中です。北海道の苫小牧市や大阪府の堺市など、全国にAIデータセンターを建設してGPU(Graphics Processing Unit)を搭載し、クリスタル・インテリジェンスのようなAIエージェントが動き、会話をする時代を支える計算基盤を構築していきます。また、国産の大規模言語モデル(LLM)を内製で開発しています。次世代社会インフラのコアになる部分とそれに必要な道具、アプリとレイヤーを分けて開発しており、クリスタル・インテリジェンスもこのパーツの一つです。ソフトバンクは事業を担う会社であり、皆さんと知恵を出し合いながらこの取り組みを進めていきたいと思っています。
IIJ鈴木会長「最も世界と近い形で仕事をしていかないといけない」
インターネットイニシアティブ 代表取締役 会長執行役員 鈴木幸一氏は、同社の強みは「運用技術の高さ」にあるとして、新入社員に向けて、次のように語った(一部抜粋)。IIJグループの新入社員は269名、うちIIJ単体で173名。
IIJは、さまざまなサービスをトラブルなく安定して運用していくという面で、世界でも一番高い技術を持っています。運用技術の高さに非常に特徴があります。一方で、この世界では絶えず新しい技術やサービスが開発され、競争が繰り広げられています。イーロン・マスク氏の会社の時価総額を見ると驚愕しますし、昔でいうと、スティーブ・ジョブズなど友人だったのですが、あっという間にIIJとは桁違いの会社になってしまいました。どうしてそんな差ができてしまったのか。それには、時間と距離の概念を変えた技術革新と言われるインターネットの分野において、日本で非常に高い評価を受け、また世界的にも高い評価を受けていたものの、日本という狭い視野のなかでやってきたからではないかという反省があります。
これからは、若いみなさんにどんどん変えていっていただき、グローバルになってほしいと思います。IIJに入っていただいたからには、もっとも世界と近いかたちで仕事をしていかないといけない。ますますビジネスは大きくなるし、面白くなります。
会社は、これまでのお金を払って通っていた学校と違い、お金をもらって働くものです。会社は一生懸命働いて、あるいは思いを持って取り組むことである程度リターンをもたらさないといけない。そういう意味では学生時代とは全く違ったことが要求されますが、ぜひIIJという会社のカルチャーをもって自由に頑張っていただきたいと思います。
自分が世界を変えようという思いを、どこかでもっていないと会社としての成長は見込まれないというくらいに、激しい競争の社会です。ビジネスの領域としては巨大な未来が約束されたなかで、IIJがどうなっていくかというのはみなさんの自由な発想、能力にかかっています。
ぜひ、若々しいエネルギーを持って難局にぶつかっていただきたいと思います。がんばってください。







