
日本のマンガやアニメ、ゲーム、キャラクターといったIP(知的財産)ビジネスは世界中から注目されています。中でも当社の主力事業「VTuber(ブイチューバー)」は日本の強みを生かせる分野であると考えています。VTuberはバーチャルキャラクターを通じて動画配信を行うタレント・アーティストの総称で、芸能人や動画共有プラットフォームのYouTube(ユーチューブ)などを利用して動画配信を行うYouTuber(ユーチューバー)と同様に様々な活動を行います。
VTuber事業はタレントビジネスを行う芸能事務所のような側面と、マンガやアニメのIPホルダーのような価値を併せ持つ、ハイブリッドなIPビジネスです。マンガやアニメのような作品は公開までにある程度の時間が必要ですが、VTuberはほぼタイムラグがなく、高頻度でリアルタイム配信を行うことが可能です。
また、双方向でのコミュニケーションが可能なため、従来のキャラクターIPよりもエンゲージメントが高まりやすい構造となっています。もちろん、課題もたくさんありますが、他のIPビジネスと比べても優位性があり、世界に通用するビジネスであると確信しています。
コロナ禍のストリーミングサービスの普及をきっかけに、世界中の方々がオンラインでエンタメを楽しむことに慣れました。VTuber事業も時流と共に新しいエンタメとして発展したように感じます。市場は拡大を続けており、2028年には世界で約2兆5700億円に達すると予測。まさにIPコンテンツの新たなビジネスモデルとして、VTuberが確立されつつあることを示しています。
私は学生だった11年に起業し、16年にその会社を事業譲渡。「世界で通用する、大きな会社をつくりたい」という一心で、50社以上のスタートアップにエンジェル投資をする中、最も成長著しかったのが17年に前代表と共同創業した当社でした。
1社目の事業ドメインと違って、天井の見えないマーケットの広がりに可能性を感じていた矢先、タレントと前代表の間でトラブルが発生し、19年に大炎上。主力事業を失い、倒産の危機に瀕する中で、諦めるという選択肢もありましたが、一念発起して資金調達やチームビルディングに奔走し、20年に代表取締役に就任、決死の思いでV字回復を果たしました(詳細は今年2月に出版した『Team Brave「勇気の経営」』(ダイヤモンド社)に記しています)。
22年からは同業他社を中心に国内外でM&Aを行い、これまでに10件の経営統合を実施しました。現在、当社が保有するIPキャラクター数は約450と世界最大規模を誇り、グッズECなどのプラットフォーム事業、アニメーション制作事業など、IPを活用した多角的なビジネスを国内外で展開中です。
加えて、米国や英国、タイ、中国にも海外法人を持ち、全世界に15拠点、従業員数は415名(3年前は39名、2年前は92名、昨年は285名)と急速に拡大しています。非常に難易度の高い経営となりますが、迅速な意思決定の下、事業間シナジーを生み出し、IPの可能性と収益性を最大化させるエコシステムを構築しています。
当社は『世界に、日本の冒険心を』というパーパス、『80億の、心をうちぬけ』というミッション、『時代をつくる、事業家集団へ』というビジョンを掲げています。サービス・コンテンツに触れてくださる方々だけでなく、従業員やタレントも含めて、一人ひとりの可能性を拡張できるよう、今後も邁進します。
ファーストアカウンティング社長・森 啓太郎「経理特化型AI企業として 照合や確認作業までも自動化 『経営部門の復権』を目指す」