スウェーデンに拠点を置くエンタープライズソフトウェア企業のIFSとPwCコンサルティングは3月31日、電力、ガス、石油業界などのエネルギー産業をはじめとした設備を保有する企業の投資最適化・アセットマネジメント高度化に向け、協業を開始すると発表した。
協業を通じて、IFSが2024年8月に10億カナダドル(当時で約1073億円)で買収した、エンタープライズ設備投資最適化ソフトウェアを手掛けるカナダCopperleafのソリューションを日本国内で提供する。両社の強みを掛け合わせ、企業の投資や設備管理の全体最適化を支援する考えだ。IFSがソリューションを販売し、PwCコンサルティングが戦略策定からシステム導入、業務変革や変革後の業務定着、人材育成およびチェンジマネジメントまで、包括的に支援する。
TECH+の取材に応じたPwCコンサルティング 公認会計士 ディレクターの阿部真也氏は「日本では人口減少や老朽化するインフラが経済に影響を与えている。一方で、国内企業では、設備の投資計画や管理、リスク評価などを、部署や業務領域ごとに異なる基準や指標を用いて行う、部分最適な実務傾向が見られる。企業全体で統一した指標による投資評価や、状態データを活用した高度な設備管理を可能とする施策が求められている」と協業の背景を説明した。
日本のアセットマネジメントを取り巻く環境は、より複雑化し、不確実性が高まっている。その要因は、高経年化した設備の増大や労働者人口の減少や、熟練者の引退に伴う技能・知識の喪失、市場競争の激化による設備投資先の厳選などが挙げられる。そのような中、設備の安全・安定の維持を、効果的かつ効率的に行う必要性が生じているという。
Copperleafが提供するソリューションは、意思決定分析を通じて、組織が資本配分を最適化しリスクを管理。より正確でデータ駆動型のビジネス意思決定を支援する。すでに世界中で2兆9000億ドル以上の資産を管理しているCopperleafは、すべての顧客が最初の計画サイクル内に投資を回収し、顧客維持率100%を達成している。
IFSジャパン プリセールス本部 部長の宇治原里志氏は「Copperleafソリューションの最大の強みは、あらゆる投資のバリュー(価値)を一貫して評価し、企業の戦略的優先事項を推進するための意思決定ができること。プロジェクトの性質によってカウントや計算の仕方が異なるバリューを、同じテーブルの上でそれぞれ比べられる形に直せるのが他社製品にはない機能だ」と強調した。
また、「AIが搭載された最適化ソリューションで、膨大な数の可能性を評価し、数分以内に最適な計画を特定することができる」と宇治原氏は説明した。
設備管理は従前から、特定の熟練者がその経験則によってリスクや故障タイミングを見極め、必要なメンテナンスを精査した上で実行してきた。しかし、引退に伴う技能・知識の喪失で、その精度が失われつつあるという。
また、中長期の設備投資計画は人手で情報を集約・分析するため、意思決定に至るまでに多くの時間を要してしまう。
取材に応じたPwCコンサルティング ディレクターの中倉有希氏は「企業は環境変化や保有設備の稼働状況、需要状況などを設備投資計画に反映する必要がある。ただし環境が複雑化している昨今では、経験・勘に基づいてそれを行うことは限界を迎えつつある。今後は、設備の状態診断、予知分析などのアセットマネジメント高度化と併せ、データドリブンな投資判断を実践していくことが重要だ」と指摘した。
また、IFSは3月25日、中小・中堅企業を中心にITソリューションを提供するソルパックと戦略的パートナー契約を締結すると発表した。主に製造業向けにIFS Cloud EAMの導入、開発、保守サービスの提供を行う。
IFSは統合基幹業務システム(ERP)や設備資産管理(EAM)、AI関連サービスなどを手掛ける日本企業の買収を検討していると表明している。買収や協業を通じて日本独自の商習慣を事業に取り込み、日本国内の製造業を中心に基幹システム刷新のニーズに応えていく考えだ。