九州地盤のトライアルが西友を約3800億円で買収

「当社の特徴は小売業でありながら、祖業がITであること。IT分野の知見を高めて、店舗のDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に進めていく」

 トライアルホールディングス社長の亀田晃一氏はこう語る。

 九州を中心にディスカウントストアを運営するトライアルホールディングスが、総合スーパー(GMS)の西友を買収する。買収総額は3826億円。同社は手元資金に加え、取引銀行から新たに3700億円の借入金を調達して充当する考えだ。

 西友は2008年に米ウォルマートの傘下となり、経営再建を進めてきた。21年には投資ファンドのKKRが西友株式の65%を取得。23年には楽天グループから追加で20%の株式を取得し、西友株式の合計 85%(議決権ベース)を保有する筆頭株主となっていた。今回、KKRの他、ウォルマートも保有する残り15%の株式をトライアルに譲渡する。

 トライアルは、もともと小売店向けのPOS(販売時点情報管理)システム開発で始まった会社。24年に東証グロースに上場。現在は九州を中心に全国343店舗を展開しており、「EDLP(Every Day Low Price)」の価格戦略を基本方針とするなど、西友との親和性も高い。今回の完全子会社化により、売上高1兆円を超える巨大小売業グループが誕生する。

 西友社長の大久保恒夫氏は「両社は食品に強みを持つスーパーマーケット業態、大規模店舗がメインの運営、総菜やPB(プライベートブランド=自主企画)商品の強化など、事業戦略上の共通点や相互補完できる点が多々あると考えている」とコメントしている。

 GMSを巡っては、セブン&アイ・ホールディングスが、イトーヨーカ堂などを束ねる中間持ち株会社を米投資ファンドのベイン・キャピタルに8147億円で売却することを決めた。

 人口減少や少子高齢化、物価高への対応など、GMSを取り巻く経営環境は厳しくなるばかり。商品力の強化や効率的な店舗運営に向け、今後も生き残りをかけた再編が続きそうだ。

【金融国際派の独り言】長門正貢・元日本郵政社長「CEOをどう選ぶか」