近年、入籍をしても結婚式をしないカップルが増えているのはご存知だろうか。リクルートブライダル総研が実施した「結婚総合意識調査2022」では、婚姻したカップルのうち24.3%(約4組に1組)が「結婚式をしていない」と回答したという。
このような結婚式の在り方が変わりつつある現代で、テイクアンドギヴ・ニーズとウエディングパークは、データを活用した結婚式の常識を変える取り組みを行っている。
今回は、ウエディング業界のリーディングカンパニーであるテイクアンドギヴ・ニーズの執行役員 運営統括本部長の金香憲吾氏にウエディング業界が抱える課題とそれを解決するために同社が行っている取り組みについて話を聞いた。
婚姻組数が減っているウエディング業界の現状
まず金香氏は、ウエディング業界の一番の課題として「結婚式を挙げる人の数が減っていること」を挙げた。
「少子高齢化に伴いそもそもの婚姻組数が減っているという問題があります。さらに、コロナ禍で結婚式を控える人が多かった時期に『結婚式の在り方』を見直す人も多く、『結婚式を挙げない』『少人数のみの挙式にする』といった考え方にシフトチェンジされた方も大勢います。結婚式を挙げる可能性のあるユーザーにとって、『結婚式の価値』がよりシビアに選択されるような状況になっています」(金香氏)
そのような課題が山積する中で、金香氏は「世間からの結婚式の見られ方を良くしていく」ことが重要だという観点から、カップルが式場見学前に自ら結婚式の費用をシミュレーションできるサービス「mieruupark(ミエルーパーク)」の取り組みに着手した。
「mieruupark」は、テイクアンドギヴ・ニーズとウエディングパークが共同開発したサービス。結婚式場が提供する正確な料金データと過去の注文実績データを基に式場見学前に費用のシミュレーションが行え、人数ごとや費目(衣装、装花、料理など)ごとの実際かかった費用の分布データを参考に、オリジナルの見積を作成できる。
両社が目指したのは「結婚式費用の透明化」。同サービスを活用したカップルが式場見学前に見積データを確認しておくことで、見学時にウエディングプランナーに費用に関して具体的な質問をして、結婚式費用に対する不安を払拭することが狙いだ。
「これまでは『まず行ってみよう』という気持ちで、あまり事前情報のないまま式場見学にお越しいただき、費用感のギャップから式場への不信感につながってしまうことが往々にしてありました。しかし、同サービスを活用してもらえば、来館前に結婚式費用について現実的な感覚が持てるようになります」(金香氏)
費用の透明化で「顧客満足度向上」
テイクアンドギヴ・ニーズとウエディングパークが共同開発した「mieruupark」だが、2024年8月よりテイクアンドギヴ・ニーズの20店舗でテスト運用を実施した。
実際に店舗で導入してみて得られたメリットとして、金香氏は「顧客満足度向上」「プランナーの働きやすさの向上」の2点を挙げた。
顧客満足度向上については、「会場の支払い総額分布」や「カンタン事前見積」など、カップルが式場見学前に見積データを確認しておくことで、見学時にウエディングプランナーに費用に関しての具体的な質問をすることができ、結婚式費用に対しての不安を払拭することに成功。スムーズな準備、楽しく安心して結婚式が挙げられることで顧客満足の向上につながったという。
さらに「プランナーの働きやすさの向上」については、カップルが事前に費用について理解した状態で来館するため、結婚式費用についてより具体的な話を進めることができ、カップルとのポジティブなコミュニケーションにつながっているという。
1人でも多くの人が「結婚式をしたい」と思えるような世界に
好調な滑り出しを見せている「mieruupark」だが、導入前は式場の支配人たちから「業績に影響してしまうのでは?」と心配されていたという。
「このサービスは、式場見学前にお客さまに見積データをお見せするものなので、式場側からは『費用を詳しく知ったらお客さまが式場見学に来てくれなくなってしまうのでは?』という不安の声が上がっていました」(金香氏)
しかし、そんな不安をよそに、サービスの導入後も業績は安定。契約率が上がった式場も多かったという。
この理由について、金香氏は「結婚式費用についてより具体的な話ができることで、カップルと式場、双方の費用に対する不安を払拭できた。そのため顧客満足の向上および費用を開示している式場への信頼度が向上し、業績貢献にもつながった」と分析していた。
この結果を受けて、テイクアンドギヴ・ニーズは全国の店舗で「mieruupark」の導入を進めている。
さらに金香氏は「この『費用の透明化』の取り組みを他社にも広げていくことで、業界全体としてクリーンなイメージを確立し、1人でも多く方に『結婚式をしたい』と思ってもらえるような世界を目指したい」と今後の目標を語っていた。