スペースデータは3月18日、中期的なR&D(研究開発)として、宇宙物理シミュレーションと人工生命をかけあわせて“新たな情報宇宙の基盤システム”の開発をめざす独自の「オムニバース構想」を発表。第一弾として、音楽・芸能事務所のクラウドナインと、東京大学発人工生命ベンチャーのオルタナティヴ・マシンとの協業を開始する。

スペースデータでは、従来のメタバースやデジタルツインは「人類が認知する世界をベースに設計されてきた」と指摘。それに対し、スペースデータが構築する“人工的なオムニバース”は「人類の既存知と時空間の制約を超え、AIやALife(生命)が自発的に環境(世界)と共進化し、新たな知性と生命圏を生み出す無限の情報システム」だと説明している。

最初の取り組みは、芸術・文化・エンタメといった分野からスタート。AdoやShallm、平手友梨奈といったアーティスト・クリエイターを抱える音楽・芸能事務所のクラウドナインと連携し、オルタナティヴ・マシンの技術監修の元、『宇宙×アーティスト』をテーマにしたかつてないプロジェクトを発足。スペースデータではこれを「エンタメ版『アポロ計画』」と呼称している。

ロードマップとしてははまず、デジタル上の環境でALife(人工生命:自律性、進化、意識など、あらゆる生命現象をコンピュータやロボット、化学反応などを用いて作りながら探求する研究分野)に学習を施し、SNSなどオンライン上のコミュニケーションを通じて、自律的に進化する基盤を構築。

その後、3年以内を目標に、ロボット技術を活用した「人工生命アーティスト」を宇宙空間へ打ち上げ、新しいアーティストエコノミーを創り出しながら、「より自由で多面的なエンタメ表現を誰もが楽しめるインフラとして構築する」としている。

最高科学責任者(Chief Science Officer, CSO) 兵頭龍樹氏のコメント

これまでのAIは、人類の活動を支える存在として開発・利用されてきました。しかし、その潜在能力(ポテンシャル)を考えると、AIは我々人類が住む世界の時空間の常識や、その存在概念を人間側に合わせる必要はありません。もしAIに独自の世界(例えば、我々が想像できる初期値の範囲として、太陽系に存在するような多様な惑星地形と環境など)を与えると、環境との相互作用を通じて自発的に自己進化する可能性があると私は考えています。我々のオムニバース構想は、AIを人類の時空間的な制約から解放し、その潜在能力を最大限に引き出すことで、私たちが想像もしないような世界をデジタル空間上に創造してもらう試み(デジタル空間を"オムニバース化する"試み)です。

執行役員 マーケティング戦略担当 片山俊大氏のコメント

当プロジェクトでは、シンギュラリティ後を見据え「人類と宇宙の新たな関係性」の再構築に挑戦したいと思います。AI・ALife等の「人類の認知・言語・想像を超えた”知性”」と真摯に向き合うことで、全く新しい創造へと繋げたいと考えております。第一段階として、まずは芸術・文化・エンタメ等の分野からスタートします。ご期待ください。

宇宙戦略本部長 坂本香子氏のコメント

スペースデータでは、JAXAと連携して宇宙デジタルツインの開発を行ってきました。デジタル上に「この世界」を再現することで、エンタメからロボットシミュレーションまで幅広い用途で利用されています。この度、宇宙デジタルツインとAIやAlifeを組み合わせることで、世界と生命が共に進化し、私たちの常識にとらわれない「オムニバース」を生み出す技術基盤を構築します。あらゆる世界を包含する最大の概念である「オムニバース」を目指し、絶え間なく成長できる組織を築いていきます。