Ars Technicaは3月14日(米国時間)、「Everything you say to your Echo will be sent to Amazon starting on March 28 - Ars Technica」において、AmazonのAIアシスタント「Alexa」に搭載されたプライバシー保護機能が廃止されると報じた。今後はすべての音声コマンドがAmazonに送信されるようになる。
ローカルでは処理できない
Alexaを搭載するAmazon Echoデバイスには、音声コマンドをローカル処理する設定が存在する。しかしながら、Ars Technicaによると、3月28日からこの設定が廃止され音声コマンドはすべてAmazonクラウドで処理されるようになるという。
理由はAIエージェントを搭載した次世代型AIアシスタント「Alexa+」への対応とみられる。
生成AIを活用するAIエージェントは、その処理に相当程度の演算能力を必要とする。そのため、エッジデバイスでは処理が間に合わずクラウドが必要とされる。
懸念の声も
AmazonはAlexa+のプライバシーおよびセキュリティについて、次のように述べている。
Alexa+とのやり取りや各種設定などの重要な情報は、Alexaプライバシーダッシュボードに一元化されています。AWSの安全なインフラストラクチャ上に構築されたAlexa+は、お客様の日常的なやり取りに世界クラスのプライバシーとセキュリティ保護をもたらします。
しかしながら、Ars TechnicaはAmazonの過去の事案を指摘し、信用は難しいと訴えている。2023年、Amazonは未成年者との会話を録音、長期保存していたことが発覚し、2,500万ドルの罰金を支払ったとされる。また、2019年、Amazonは訓練のためとして従業員にAlexaの音声録音の視聴を許可していたとされる。
Ars Technicaは他にも次の事案を挙げ、Amazonのプライバシーに対する姿勢には懸念があると指摘している。
Amazonに個人の音声サンプルを託すことを躊躇する他の理由としては、Alexaの音声録音が過去に刑事裁判で使用されたことや、連邦取引委員会によると、Amazon Ring(防犯カメラ)で撮影された「顧客のプライベート空間のビデオ録画を数千人もの従業員と請負業者が視聴することを許可した」という疑惑に関連して、2023年に和解金を支払っていることなどが挙げられる。
決断の時が迫る
Amazon EchoなどAlexaを搭載したデバイスのユーザーには、3月28日までに決断することが求められる。それはAmazonに音声データを提供しリスクを承知でAlexaおよびAlexa+を活用するか、またはデバイス(Alexa)の使用を中止するかだ。
後者を選択し、他のAIアシスタントに乗り換えたとしても同様のリスクは残る。エッジデバイスで処理できるAIエージェントが登場するまでの間、ユーザーはデバイスの選択と利用についてこうしたプライバシー上のリスクが存在していることを把握しておきたい。