日立製作所(日立)は3月14日、自然災害やパンデミックなどのリスクに対処し、製造業のサプライチェーンを強靭化するため、生成AIを活用した 「ディープインサイト推定技術」 を開発したと発表した。同技術は、企業内データやオープンデータをリアルタイムに収集・関連付けることで、新たなインサイトを抽出する。

  • 製造業のサプライチェーンリスク低減の全体像。今回は製造拠点推定の効果を実証

    製造業のサプライチェーンリスク低減の全体像。今回は製造拠点推定の効果を実証

「ディープインサイト推定技術」は、部品の型名や素材、供給元企業名などの情報と、Web上の公開情報を生成AIに入力することで、これまで特定が困難だった製造拠点を高精度に推定できる。

この技術を活用し、製造業のサプライチェーン強靭化に向けた サプライヤーの製造拠点推定を実施。調達契約情報を製品コード体系に基づいて変換し、生成AIを活用して企業公式サイト、ISO認証情報、地図情報などのオープンデータから製造拠点候補を抽出した。さらに、一貫性や正確性を確保する処理を加えることで、緯度・経度レベルでの高精度な製造拠点推定を実現した。

日立グループ内の複数製品におけるサプライヤー群を対象に評価を行った結果、85%を超える推定精度 を達成したという。今後は、地震や台風、河川氾濫の予測情報、パンデミックや地政学リスクと組み合わせることで、調達先製造拠点の中からサプライチェーンリスクのある拠点を特定。さらに、在庫確保や代替調達先の調査を行い、納期遅延の影響を評価できるようになる。

日立は、東京大学デジタルオブザーバトリ研究推進機構との共同研究 を進め、この技術と多様なリスク情報や予兆を統合することで サプライチェーンリスクの可視化を実現するとしている。さらに、行政やパートナーと連携し エコシステムを形成 しながら、サプライチェーンリスク管理システム・サービスの社会実装を推進。企業のサプライチェーン安定化と、多様な社会リスクへの対応を目指す計画だ。