
エンブラエル機を初導入
旺盛なインバウンド需要が続くと見越してANAホールディングス(HD)が攻勢に出る。同社は2028年度から32年度にかけて新型の航空機を77機導入。カタログ価格で約2.1兆円超という大型投資となる。
全日本空輸(ANA)はコロナ前に予定していた欧州向けの新路線を24年の年末年始にかけて相次いで就航させた。イタリア・ミラノを皮切りに、スウェーデン・ストックホルム、トルコ・イスタンブールの3路線だ。年末年始の旅客数は前年同期比で約1.5倍に増えた。
ANAHD社長の芝田浩二氏は「国内線の収益性向上と、成長領域である国際線の拡大につなげ、世界をリードするエアライングループとして、持続的な成長をめざす」とコメント。既に発注済みの機材を合わせると、30年度時点でグループ全体の機材数は約320機と、24年末から約2割増える形だ。
新機材は成長領域に位置付けるアジア・北米間の需要を取り込むために「足(航続距離)の長い機材」(関係者)として約300席の中型機「ボーイング787-9型機」を18機発注。30年代前半に年間の発着容量が30万回から50万回に増える成田空港の再拡張も見据える。
国際線ではインバウンドは好調でもアウトバウンド(日本人の海外渡航)の伸びはそこまで高くない。だが、「787」なら貨物スペースを活用できるため、欧州線であればブランド品や自動車部品、医薬品、精密機器などの貨物収入を増やせる。
また、国内線は国際線ほどの成長は見込めない。需要に合わせて機材や便数を柔軟に変更していく方針。そこで需給の最適化を図るために日本で初となる100席クラスのエンブラエル製の小型機「Eシリーズ」を20機発注。28年度から導入する。更に現行機材の更新として小型機のエアバス「A321neo型機」を14機、「ボーイング737-8型機」を12機発注する。
先んじてJALが24年3月に42機を約1兆8700億円で新機材として導入すると発表している。トランプ関税でヒトやモノの動きが左右される懸念がある中で、機材戦略が成長のカギを握ることになりそうだ。