
経営陣が変わっても 残された選択肢は少ない…
カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールの買収提案に揺れるセブン&アイ・ホールディングス。創業家によるMBO(経営陣が参加する買収)での買収計画案がとん挫したことで、社長の井阪隆一氏が退任し、新たな経営陣のもとで戦略の練り直しを迫られることになった。
「今後さらなる成長を実現するためには、今こそ経営交代が最適のタイミングだと考えた」(井阪氏)
井阪氏が事業会社セブン-イレブン・ジャパンの社長を経て、本体の社長に就任したのが2016年。その後、井阪氏は2021年に約2.3兆円をかけて米コンビニ大手のスピードウェイを買収するなど、海外で新たな需要を取り込むことに成長の活路を見出した。
ただ、足元ではコンビニ事業に逆風が吹く。国内外ともインフレ・物価高が続く中で価格対応が遅れ、消費者の節約志向に対応できなかった。その結果、第3四半期(24年3―11月)の純利益は636億円と前年同期比で65.1%減。通期(25年2月期)は、営業収益11兆8790億円(同3.5%増)、純利益1630億円(同27.4%減)と、増収減益となる見通しだ。
今後、同社の経営のかじ取りは筆頭独立社外取締役のスティーブン・ヘイズ・デイカス氏に託される。デイカス氏はもともと米ウォルマートの出身で、一時は西友のCEO(最高経営責任者)をつとめた人物。その後はスシローグローバルホールディングスで会長をつとめ、2022年からセブンの社外取締役に就くなど、日本の流通・外食業界での経験も豊富だ。
「クシュタールとの対話を続けながらも、引き続き、会社の価値を向上させられるような他のオポチュニティーも模索していく」と語るデイカス氏。
ただ、経営陣が変わっても、セブンに残された選択肢は少ない。カナダ企業の買収提案を受け入れるにせよ、単独路線を模索するにせよ、カナダ企業の提案を上回る成長戦略を打ち出すことができなければ、株主の理解を得ることは難しそうだ。