サイボウズは3月4日、artience(旧東洋インキSCホールディングス)におけるノーコード開発ツール「kintone(キントーン)」の活用事例を発表した。同社はグループ全体の情報基盤を見据えkintoneを展開し、2024年4月から10月までの半年間で1万1000時間の削減を実現したという。
申請承認のためのワークフローアプリや案件管理アプリといったSFA的な利用から、議事録共有アプリやFAQアプリまで活用は多岐にわたる。1400人を超えるユーザーが現場の業務改善のために役立てているとのことだ。
1万1000時間の削減と4000万円のコスト圧縮
artienceでは2030年をゴールとする経営計画を推進しており、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」も1つのテーマとし、IT技術を活用したDX推進を行っている。
その取り組みの中で、kintoneが全社的なDX基盤として候補の1つに挙がったのは、先行して一部の事業会社において業務プラットフォームとして使用されていたからだ。事業会社での評価も良かった。最終的に、簡便なUIと現場でも開発しやすい設計、セキュリティやガバナンスの観点も評価され、事業会社で蓄積されたデータをグループ会社全体で活用できる点からkintoneを採用したとのこと。
事業会社で利用されていたkintoneとのドメイン統合を経て、グループ全体での業務改善プラットフォームとしてkintoneが広がっていった。現在は、10ほどのグループ会社で1400人超のユーザーがkintoneを活用。kintoneの普及を第一に自由にアプリ作成可能な権限を現場に付与したことで、多くのアプリが現場主体で作成され、実際に稼働しているアプリは530個を超えているという。
その他、定量的な効果として2024年4月から10月までの実績で1万1000時間の削減を実現。個別システムを構築した場合に比べて4000万円ほどのコスト圧縮効果を見込んでいる。ペーパーレスの側面でも効果が出ており、通期で6万枚ほどの紙削減を実現するとのことだ。
kintoneと基幹システムの連携
kintoneの利用者を大きく増やした使い方の一例が、業務自動化を目指して作成された基幹システムとkintoneを連携させて製品の価格を登録する価格登録アプリだ。基幹システムから製品情報をCSVで出力し、そのデータをRPAにてkintoneに投入。
現場で営業担当者が価格をkintoneに登録した後、再びRPAを用いてkintoneのデータを取り込んで基幹システムに戻す仕組みを構築した。営業担当者の業務を時短化・省力化できる仕組みとして、複数の事業会社で一気に導入され、これを契機にkintone活用が広がったという。
現在はPoC的に業務アプリを自由に作成できる運用として利用を促進している段階だが、直近では基幹システム周辺の全社的に共通している業務をkintoneに移管し始めている。今後は利活用の促進とガバナンスを両立できるような運用体制の整備を進める考え。
また、グローバルに事業展開をする上で、海外拠点も含めた現場の課題解決につながる環境づくりとして、kintoneの展開を引き続き検討していくとのことだ。