
政府は、次世代半導体の国産化を目指すラピダスへの支援拡大に向け、情報処理促進法と特別会計法の改正案を閣議決定した。政府がラピダスに出資して株主となるほか、民間金融機関の融資を対象に債務保証も行う。政府の関与を強めることで民間から出融資を呼び込み、巨額の資金が必要なラピダスの事業を支える狙いがある。
改正案によると、ラピダスへの金融支援は、経済産業省が所管する独立行政法人・情報処理推進機構(IPA)が担う。資金出資に加え、国の資産である工場の設備と株式を交換する現物出資も実施。借入金の債務保証や、劣後ローン融資、金融機関への利子補給なども行う。
また、支援の財源となる「先端半導体・人工知能関連技術債」を新たに発行。法人事業税のうち資本金などを基準に課税する分や、増資時に支払う登録免許税の優遇措置も導入する。改正法が成立すれば、政府は今年後半にもラピダスに1000億円を出資する方向だ。
支援対象は、情報処理の高度化に必要なものの、国内で安定的に供給されていない「指定高速情報処理用半導体」を生産できる企業とされている。支援先は公募で今年秋ごろまでに選定するが、現時点で該当するのはラピダス1社となっている。
ラピダスは北海道千歳市で工場を建設中で、今年4月には試作ラインを稼働させ、2027年には量産を始める計画だ。実現には総額5兆円が必要とされ、政府は既に最大9200億円の補助を決めたが、さらなる支援に踏み込む。
政府は半導体の国内生産を後押しするため、関連企業に積極的な補助を行ってきた。しかし、ラピダスのような生産実績のない企業への大規模支援は異例で、事業が失敗すれば国民負担が生じる懸念もある。
武藤容治経産相は2月7日の閣議後記見で、「世界から半導体を買わなければ生きていけない国になるのか、あるいは日本で生産することで世界に新たに貢献できるのか分岐点にある」と述べ、理解を求めた。