電通は2月17日、日本の総広告費と、媒体別・業種別広告費を推定した「2024年 日本の広告費」を発表した。2024年の総広告費は通年で7兆6,730億円(前年比104.9%)となり、2021年から4年連続で成長し、3年連続で過去最高を更新した。
同社は日本の広告費を、「マスコミ四媒体広告費(新聞、雑誌、ラジオ、テレビメディア広告費の合算。それぞれの広告費には制作費も含まれている)」「インターネット広告費(インターネット広告媒体費、物販系ECプラットフォーム広告費、インターネット広告制作費の合算)」「プロモーションメディア広告費(屋外、交通、折込、DM<ダイレクト・メール>、フリーペーパー、POP、イベント・展示・映像ほかの合算)」に分けて、調査・分析を実施。
電通メディアイノベーションラボ 研究主幹の北原利行氏は、「日本の広告費は2021年から成長しているが、コロナ禍を経て順調に回復している。マスコミ四媒体広告費、インターネット広告費、プロモーションメディア広告費がいずれも成長したのは2014年ぶりのこと」と述べた。
マスコミ四媒体広告費
マスコミ四媒体広告費は前年比100.9%の2兆3,363億円となった。「新聞広告費」は減少したが、「雑誌広告費」「ラジオ広告費」「テレビメディア広告費」が増加し、3年ぶりに前年を上回った。
新聞への出稿は不透明な世界情勢や物価・人件費高騰などの影響も受け、伸び悩んだ。パリ五輪などの大型スポーツ大会や各種イベントの開催があったが、広告費を押し上げるには至らなかったという。
雑誌広告費は、出版社・雑誌編集部などによるタイアップコンテンツのSNS上での二次展開、広告主へのオリジナル企画コンテンツ提供などが増加したことにより、通年でプラス成長となった。
ラジオ広告費は、さまざまな音声コンテンツを届ける音声メディアへの関心が高まり、radikoを含むデジタルオーディオ広告の増加とともに、地上波ラジオ放送における広告市場も、通年で前年を上回った。北原氏は、「『ながら視聴』ができるラジオは堅調な需要があり、受信機がなくても聴けるインターネットラジオの広告も増えた」と説明した。
テレビメディア広告費は地上波テレビと衛星メディア関連の合算となっている。地上波テレビの番組(タイム)広告費は、大型スポーツ大会や各種イベントの開催に伴い好調に推移したが、令和6年能登半島地震による被災、不透明な世界情勢や、物価・人件費高騰などの影響を受け、前年を下回った。
スポット広告費は、半導体不足の解消などにより「自動車・関連品」が復調したほか、インバウンド需要など消費行動の活性化も捉えた「薬品・医療用品」「化粧品・トイレタリー」や、コロナ禍からの回復により外出・行楽需要が前年に続き高まった「交通・レジャー」が好調に推移し、前年を上回った。
インターネット広告費
インターネット広告費は、インターネット広告媒体費、「日本の広告費」における「物販系ECプラットフォーム広告費」、インターネット広告制作費の合算。
北原氏は、「インターネット広告は動画を中心に成長している。諸外国はインターネット広告が60%を超えているが、日本も半分に迫る勢い。今後、日本も海外のように推移すると見られる」と説明した。
インターネット広告媒体費は前年比110.2%と2兆9,611億円を記録し、二ケタ成長となった。動画広告が堅調で全体を押し上げ、中でも、SNS上の縦型動画広告などの需要の高まりが寄与したという。
インターネット広告媒体費の一部のうち、マスコミ四媒体由来のデジタル広告費は前年比117.5%と1,520億円になり、二ケタ成長となった。
プロモーションメディア広告費
プロモーションメディア広告費は、屋外広告、交通広告、折込、DM(ダイレクトメール)、フリーペーパー、POP、イベント・展示・映像ほかから構成される。これらの合計金額は前年比103.4%の1兆6,850億円となった。
屋外広告、交通広告、POP、イベント・展示・映像ほかは前年比増、折込、DM、フリーペーパーは前年比減となった。
北原氏は、「日本の経済が伸びていれば広告も伸びると言われているので、広告費は経済指標の一つとして利用できる。今回の結果から、日本の経済はプラスに推移していると考えられる。景気の影響が全般的に広告市場にプラスとなっているのではないかと見られる」と語っていた。