高知県吾川郡いの町、程野地区自然美化維持協議会、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は、いの町吾北地区に位置する観光地「にこ淵」の環境整備事業を進めてきた。NTT Comは2月26日、整備が完了し、新たな遊歩道や公衆トイレなどをオープンすることを発表した。

なお、同事業は観光庁が実施する「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業」に採択され実施したものだ。

環境整備の背景

いの町は「豊かな自然環境や地域資源を活かした魅力あるまちづくり」を振興計画の基本理念で掲げ、交流人口の拡大に努めるなど地域の活性化を進めている。

そこで3者は「仁淀(によど)ブルー」の聖地として近年SNSなどで認知度が高まっている滝つぼ「にこ淵」に着目し、車両のナンバーと台数を把握できるAIカメラを通じて来訪する車両の把握を実施した。その結果、約80%が高知県外からの訪問であると推測されるデータが取得できたため、にこ淵を中心として交流人口増加を図る取り組みを開始することにした。

  • AIカメラで取得した来訪車両データ

    AIカメラで取得した来訪車両データ

勾配の緩やかな遊歩道

にこ淵周辺の既存の遊歩道には急な階段があり、すれ違いや通行に時間を要することや、高齢者などがにこ淵を見られないことが課題とされていた。そこで今回の事業では新たになだらかな遊歩道を整備するとともに、遊歩道の途中ににこ淵を見ることができるビューポイントを設置。このビューポイントまでは階段の無いスロープで、ビューポイントから先の階段も勾配が緩やかで段差も低いため、体力に不安がある場合でもにこ淵を楽しめるという。

  • 勾配の緩やかな遊歩道

    勾配の緩やかな遊歩道

トイレの整備

以前は仮設トイレのみ設置されていたが、新たに男性用・女性用トイレとバリアフリートイレを備えた公衆トイレを整備した。

  • 新設した公衆トイレ

    新設した公衆トイレ

交通渋滞緩和の取り組み

にこ淵は急峻な山間にあり大規模な駐車場を整備できず、小規模な駐車スペースを道路脇に複数設けていた。しかし駐車スペースが点在しているため、空きスペースがあるにもかかわらず渋滞が発生していた。また、大型バスの行き違いなども渋滞に拍車をかけていたという。

そこで、にこ淵へ向かう道路の途中にLEDビジョンを設置し駐車スペースの位置や満空情報を表示するシステムを構築。駐車場の空きスペース検知においては、にこ淵に近く利用率の高い5カ所の駐車スペースに設置した3台のカメラで全体の状況を把握し、駐車されている車両の台数をAIで解析することで空きスペースを把握している。また、大型バスの転回が容易にできるよう駐車スペースを拡張した。

  • 駐車スペースを示すLEDビジョン

    駐車スペースを示すLEDビジョン

  • AIカメラ

    空きスペースを検知するAIカメラ

スペシャルプレイスキット

同事業ではハード面での整備に加え、持ち運びが容易な屋台キット「スペシャルプレイスキット」を活用し、にこ淵や道の駅などで飲食の提供のほかに観光案内や周辺の飲食店、イベントなどの情報を提供し観光客の分散と地域周遊を促す取り組みについても実証を実施した。これは地域の飲食店や地元で起業したい若者、地域おこし協力隊などの出店を想定しており、初期投資も少なく副業としても出店可能なため、地域の事業者の活動の後押しとしての活用が期待される。

  • スペシャルプレイスキット出店のイメージ

    スペシャルプレイスキット出店のイメージ