KDDIとKDDI総合研究所は2月27日、AIとの対話によって運用者の要求に応じたネットワークを構築・設定・管理するシステムを開発し、2月12日に検証環境での商用ユースケースの実証に成功したことを発表した。

このシステムは運用者とAIとの自然言語での対話からネットワーク制御システムが理解可能なデータ記述言語(Network Intent)を自動生成する技術と、このNetwork Intentから自律的にトラフィックを制御する技術で構成される。

従来は経験のある運用者の知見に基づいて行われていたイベント対策などの作業負荷軽減やヒューマンエラーの回避が同技術によって実現され、経験や知識が少ない運用者でもネットワークの設定変更などに対応できるようになる。まずはNetwork Intentに基づいて自律的にトラフィックを制御する技術について、2025年度の商用実装を目指すとのことだ。

  • AIとの対話によるネットワーク運用の例

    AIとの対話によるネットワーク運用の例

運用者の自然言語からNetwork Intentを自動生成する技術

運用者からの要求をネットワーク制御システムへ正確に伝えるためには、YAML(構造化データやオブジェクトを文字列で表現するためのデータ形式)などの記述言語で作成する必要があり、ミスなく制御文を作成するために専門的な技術が求められる。KDDI総合研究所は、AIと運用者が自然言語で対話し、自動的にネットワーク制御システムが理解可能なNetwork Intentを生成する技術を開発した。

同技術には、運用者の記述からNetwork Intentを作成するために必要な情報が得られない場合に、AIが運用者へ必要な情報について質問する対話機能を備える。また、質問する際には「アプリケーションが利用する帯域幅」のような専門的な質問ではなく、「想定するアプリケーション種別は何か」など運用者に分かりやすい質問を行い、Network Intentを作成するという。

これにより、運用者が回答しやすくなるだけでなく、ネットワークの構築・設定・管理に必要な情報の洩れや数値の入力ミスの防止が期待できる。

Network Intentに基づき自律的にネットワークを制御する技術

現状のネットワークは高度化や複雑化により、単純な自動化ではメンテナンス負荷が増加するといった課題が残されている。これに対しKDDIはNetwork Intentに基づくネットワークの実現に必要な、各機器の具体的な設定項目・設定値をKubernetes(複数のコンピュータ上でアプリケーションを自動的に管理するためのソフトウェア)のコントローラーが自律的に判断し、ネットワーク全体を制御する技術を開発した。

これによりネットワークの制御において運用者の介在が不要となり、個人のノウハウや能力に依存することがなくなるとともに、手動での設定作業に伴うエラーのリスクを削減する。迅速かつ効率的なネットワーク管理を支援するという。

実証の成果

KDDIおよびKDDI総合研究所はこのシステムを使い、「花火大会に向けたネットワークの増強」や「トラフィックの偏りを改善」といった運用者の要求を満たすネットワークを自律的に設定し管理する実証に成功した。さらに、運用者の負荷が軽減されるとともに、自律的な運用によるヒューマンエラーの回避も可能であることを確認したとのことだ。

花火大会などの大規模なイベント対策については、AIとの対話によって想定されるトラフィック量など詳細化し、ネットワークへの要求が記載されたNetwork Intentを作成。これをKubernetes上のコントローラーがネットワークへの要求を満たすように各機器への設定内容に変換することで、ネットワークの設定変更まで実施可能になり、運用者の作業負荷軽減やヒューマンエラーの回避が実現される。