OpenAIに買収を持ちかけて業界を驚かせたElon Musk(イーロン・マスク)氏だが、OpenAIが条件を満たせば提案を取り下げる準備があるという。意向表明書により明らかになった。

マスク氏が提示した条件とは?

マスク氏および同氏の投資グループは2月10日、OpenAIを974億ドルで買収する提案を行った。マスク氏はOpenAIを提訴するなど、互いに良好な関係とは言えない。

買収提案に対し、OpenAIの共同創業者でCEOを務めるSam Altman(サム・アルトマン)氏は「ノーサンキュー」とXに投稿している(この投稿には続きがあり「もし望むならわれわれはtwitterを97億4000万ドルで買うよ」とアルトマン氏は綴っている)。

2月12日に公開された意向証明書(作成日は10日付)によると、買収の提案は「真剣なものであり、非営利は独立した買い手が、その資産に対して支払う金額で補償されなければならない」としている。

だが「OpenAIの取締役会が慈善のミッションを保持し、(慈善団体から営利企業への)転換を中止することで、“資産売り出し中”の看板を下げることを規定する用意があるのであれば、マスクは入札を取り下げる」と記されている。

OpenAIは非営組織として設立されたが、2019年に非営利の使命を維持しつつ、必要な資金を調達するために考案されたcapped-profit(利益上限付き)の構造に移行、同社の非営利部門(OpenAI Nonprofit)は利益上限付きでOpenAIの唯一の支配株主となっている。

OpenAI Nonprofit(非営利組織)は使命として「全人類に利益をもたらす安全なAGI(汎用人工知能)の構築」を掲げ、OpenAI Nonprofitが同社のガバナンスを担っている。しかし、資金調達のために営利子会社「OpenAI LP」を設立し、利益上限付きのビジネスモデルを採用。こうした組織構造により、非営利の使命を維持しつつ必要な資金を確保している。

OpenAIは2024年に営利企業に向けた再編を進めることを明らかにしており、マスク氏は当時から異を唱えてきた。同氏はOpenAIの共同創業者の1人だが、アルトマン氏ら現在の幹部と対立している。この書類からは、買収提案は全額現金での取引を前提としていること、期限は2025年5月10日となっていることなども明らかになっている。