Recorded Futureは2月12日(米国時間)、「Taiwan Invasion Risk: Business Contingency Plans for 2025-2049」において、中国による台湾侵攻のリスクを評価した脅威分析レポートを公開した。

直近のリスクは低いが長期的に高まるとして、影響を受ける企業に緊急時対応計画の策定を開始するよう推奨している。

  • Taiwan Invasion Risk: Business Contingency Plans for 2025-2049

    Taiwan Invasion Risk: Business Contingency Plans for 2025-2049

破壊的なサイバー攻撃キャンペーンの恐れ

レポートでは、現在の中国が推進する戦略の中心に「平和的統一」があることから、2026年までに武力侵攻が開始される可能性は低いと評価している。しかしながら、2027年から2049年にかけて、侵攻を回避できないとは言わないがリスクは高まると指摘されている。

この評価は中国、台湾、米国の最近の行動や、中国の経済的および地政学的状況が考慮されたもの。短期的には中国の苦境に立たされた経済的課題、人民解放軍の能力不足、国民の動員状況などから、台湾が侵攻を受ける可能性は低いと評価している。しかしながら、長期的には経済の復興、軍の強化を達成し、可能と判断された段階で武力統一に踏み切る可能性が高いとしている。

台湾侵攻が周辺地域および世界経済にどのような影響を与えるかについて、さまざまなシナリオが想定されるとしつつ、ほぼ確実に起こる事柄として次の被害を予測している。

  • 人命(従業員)の喪失
  • 重要なインフラの喪失(破壊的なサイバー攻撃キャンペーンを含む)
  • 物理的な企業資産の破壊
  • コンピューターネットワークの侵害

また、紛争当事国の企業には社会的圧力、規制圧力(制裁、輸出管理など)や、世界中さまざまな立ち位置の脅威アクターやハクティビストによるサイバー攻撃も予測される。

Bloomberg Economicsによると、台湾はスマートフォンやデータセンターで利用される半導体の約90%を生産しており、台湾侵攻は半導体産業にかつてない混乱をもたらす可能性があるという。また、台湾は年間6,000億ドルの貿易を支える港湾を所有し、台湾海峡は年間約11兆ドルの商品が通過していることから、世界経済に与える影響は第2次世界大戦と同等かそれ以上の可能性があると警告している。

混乱に備える

レポートが示す最短のタイミングで台湾侵攻が開始された場合、企業には2年弱しか時間が残されていない。そのため、今後1年以内に緊急時対応計画を策定し、実際に行動できるよう準備することが推奨されている。

Recorded Futureは検討すべき事項として、次のものを挙げている。

  • アジア地域以外の代替サプライヤーとの関係構築
  • 戦争リスク保険の購入評価
  • アジア地域以外への投資の多様化
  • 通貨ヘッジ戦略の検討
  • シナリオベースのストレステストによる運用と投資の脆弱性の特定
  • 利害関係者への情報提供に必要な階層型コミュニケーション戦略の確立
  • 主要なシステムとデータを暗号化し、オフラインバックアップとして維持
  • ネットワークの横移動を制限するため、ミッションクリティカルなシステムを隔離
  • 地理的な条件に基づくサイバーセキュリティシステムの導入
  • スパイ活動のリスクを軽減するサプライチェーンパートナーとの安全なデータ通信の確立

中国が今後どのような行動に出るかはまだわからない。しかしながら、事態が切迫してから対応策を検討しても間に合わない。そのため、企業には速やかに計画を策定し、基盤作りを開始することが望まれている。