1月30日~同31日の間にNEC、日立製作所と富士通の3社が2024年度第3四半期の決算を発表した。本稿では各社の決算状況を日程順で見ていく。なお、NECと富士通は第3四半期までの累計実績、日立は第3四半期単体の実績を中心とした数値となる。第2四半期の各社の決算はこちらを参照。
NECは通期予想を上方修正
はじめに、1月30日に発表したNECから。同社の第3四半期累計実績は、売上収益が前年度比3.0%減の2兆3218億円となり、調整後営業利益は同2.4%増の1502億円の増加、Non-GAAP営業利益は同2.8%増の1623億万円、Non-GAAP当期利益は同2.4%増の1084億円となっている。
セグメント別で見ると、第3四半期累計のITサービスの売上収益は前年度比4.6%増の1兆3746億円、社会インフラの売上収益は同5.8%増の7729億万円となっており、NEC 取締役 代表執行役Corporate EVP 兼 CFOの藤川修氏は「ITサービス・社会インフラの両セグメントで大幅に増益した」と述べている。
社会インフラ領域に関しては、テレコムサービスの第3四半期累計の売上収益は前年度比3.8%減の5344億円となっている一方で、調整後営業利益は同250億円増の293億円となっている。
なお、第3四半期単体の数値としては売上収益が前年同期比1.1%減の8351億円、調整後営業利益は同4.6%増の892億円、Non-GAAP営業利益は同5.4%増の975億円、Non-GAAP当期利益は同5.0%増の709億円となった。
2024年度の業績予想は前回から修正を加え、売上収益は前年度比1.9%減の3兆4100億円(修正前から400億円増)、調整後営業利益は同16.3%増の2600億円(同50億円増)、Non-GAAP営業利益は同23.0%増の2800億円(同250億円増)、Non-GAAP当期利益は同2.4%増の1820億円(同170億円増)に上方修正している。
生成AIブームを追い風に送配電事業が好調な日立 - 通期見通しを上方修正
続いては日立。同社における2025年3月期第3四半期(10~12月)の連結決算(国際会計基準)は、売上高にあたる売上収益が前年同期比14%増の2兆4652億円となり、中核事業の「IT(デジタルシステム&サービス:DSS)」と「環境(グリーンエナジー&モビリティ(GEM))」が好調に推移。一方、自動車部品の日立Astemoの持ち分法投資損益の悪化が業績に響き、当期利益は同41.3%減の1385億円となった。
生成AIブームを追い風に送配電事業が好調となっており、第3四半期における送配電子会社の日立エナジーの売上収益は前年同期比26%増の6099億円だった。受注残からの売上転換により増収を達成。売上規模も増え、着実なプロジェクトの実行、継続的な生産効率向上および受注残のクオリティ(リスク・収益性)改善の影響により増益につながったとしている。
DX(デジタルトランスフォーメーション)支援事業「Lumada(ルマーダ)」も好調だった。同期間における売上収益は前年同期比30%増の7400億円だった。クラウドやセキュリティ関連の事業が伸びた。
日立は生成AIのユースケース1000件以上のノウハウ、OTナレッジを活用した業務特化型LLM(大規模言語モデル)を提供開始。金融や製造、交通など専門性の高い業務分野への適用を加速させている。また、同社が1兆円を投じた米IT大手のGlobalLogicが最先端のセキュリティ監視センター(SOC)をポーランドに開設した。
日立製作所 執行役専務 CFO(最高財務責任者)の加藤知巳氏は「再生可能エネルギー関連案件や送電網設備の更新案件が好調だった。DXやモダナイゼーションの追い風を受ける国内IT事業も伸びた」と説明した。
2025年3月期通期の連結見通しについては、売上収益は前期比0.3%減の9兆7000億円(従来予想から5500億円増)、調整後営業利益が同23%増の9300億円(同550億円)、当期利益は3%.4増の6100億円と、従来予想から引き上げている。
富士通はUvanceが前年比30%増の成長などで増益
最後は富士通だ。同社における2024年度の9カ月累計決算は連結で前年同期比0.8%減の2兆6214億円とハードウェアソリューションとユビキタスソリューションの減収が影響し、調整後営業利益は同1.5%増の1576億円となり、9カ月累計の調整後営業利益も過去最高となった。
Fujitsu Uvanceなどサービスソリューション領域では、売上収益が前年比2.7%増の1兆5631億円、調整後営業利益も同様に同2.7%増の1615億円でとなった。国内ではDX(デジタルトランスフォーメーション)やモダナイゼーションが増収をけん引し、増収効果に加えて採算性も向上しており、9カ月の累計では過去最高となった。
富士通 CFO(最高財務責任者)の磯部武司氏は「成長ドライバーであるサービスソリューションは、増収に加えて力強いペースで採算性が改善した。ハードウェアソリューションは前年の大型案件の反動と円安の影響を受けて減収減益。ユビキタスソリューションは低採算だった欧州事業からの撤退に伴って利益面が健全化した。デバイスソリューションは増収増益だったものの為替の影響を除くと前年並み」と、振り返った。
セグメント別では、サービスソリューションは国内で特にDXとモダナイゼーションの商談が成長をけん引し、グローバル全体ではFujitsu Uvanceが前年比30.1%増と伸長している。エンタープライズビジネス領域は9カ月累計で前年比で105%、DXおよびSX(サステナビリティトランスフォーメーション)関連や、基幹システムのモダナイゼーションが継続して拡大した。
ファイナンスビジネス領域は前年比で106%。金融機関向けの基幹業務システムの更新案件を複数獲得した前年を上回る着地となった。パブリック&ヘルスケア領域は前年度の大型案件受注の反動を受け、9カ月累計では95%に落ち着いた。ミッションクリティカル領域はクラウド関連の商談など複数の案件を獲得し、前年から110%伸長した。
前述したように特に事業ポートフォリオ変革の要と位置付けるFujitsu Uvanceの成長が顕著だ。9カ月累計の受注額は前年同期比32%増の3485億円、売上も同30%増となる3217億円、サービスソリューションの売上全体に占める構成比も21%まで拡大している。
なお、第3四半期単体の数値は売上収益が前年同期比0.7%減の9247億円、調整後営業利益が同14.9%の781億円となる。2024年度の業績見通しは、売上収益が3兆4700億円、調整後営業利益は2900億円。
以上が3社の2024年度における第3四半期の数値だ。各社ともに好調でNECと日立は連結の業績見通しを上方修正しており、富士通はFujitsu Uvanceをはじめとしたサービスソリューション領域の成長に伴い増益となった。