文部科学省は24日、特定分野に強みを持つ地域の中核大学の研究力を支援する事業「J-PEAKS」の2024年度採択支援先に弘前大学、横浜市立大学など国公私立大13校を選んだと発表した。同省は23年度の支援先として北海道大学など12校を選んでおり、支援対象となる25校が決まった。
この事業は日本の研究力低下が指摘される中で日本全体の研究力をけん引する研究大学群をつくるために創設された。文科省が世界トップクラスの研究水準を目指して進めている「国際卓越研究大学制度」とは別に、地域の中核となり、特色ある研究に取り組む大学を支援するのが目的。選定した各校に5年間で最大55億円程度を助成する。
今回「令和6年度(24年度)採択」として選ばれたのは、国立大学では弘前大学、山形大学、新潟大学、長岡技術科学大学、山梨大学、奈良先端科学技術大学院大学、徳島大学、九州工業大学、長崎大学、熊本大学の10校。公立大学は横浜市立大学、私立大学は藤田医科大学、立命館大学の2校で、合わせて13校。
前回、2023年末に「令和5年度(23年度)採択」として選ばれた12校は、国立、公立、私立順不同で北海道大学、千葉大学、東京農工大学、東京芸術大学、慶應義塾大学、金沢大学、信州大学、大阪公立大学、神戸大学、岡山大学、広島大学、沖縄科学技術大学院大学。
選ばれた各大学は10年後のビジョンを描き、強みや特色ある研究力を核とした経営戦略を策定。国内外の大学や研究機関と連携し、研究の国際展開や社会実装の加速、レベルアップのための取り組みを進める。
支援内容と支援額としては、専門人材の人件費や、調査・研究力の向上戦略の実行に必要な経費(戦略的実行経費)が各校最大25億円程度。研究機器の購入費や研究環境の高度化に向けた費用などの経費(研究設備等整備経費)が各校最大30億円程度という。
各校が提案した特色ある研究テーマとして今回選定された13校では、例えば弘前大学は「グローバルWell-being共創社会を実現する異分野融合型総合知による革新的卓越研究大学群の構築」、山梨大学は「グリーン水素を核に世界屈指の研究力を強化し、グリーンイノベーションで地方創生を先導する」、熊本大学は「半導体実装から社会共創研究を通じて地域イノベーションの実現と持続可能な産業都市構想を目指す」を挙げた。
前回選定された12校では、例えば千葉大学は「免疫学・ワクチン学研究等を戦略的に強化し、成果の社会実装につなげるとともに、取り組みを学内に横展開する」、広島大学は神戸大学などと連携する形で「放射光による物質の視(み)える化技術を核とした半導体・超物質及びバイオ領域融合型産業集積エコシステムの実現」を挙げている。
国際卓越研究大学制度では東北大学が第1号に認定され、初年度となる2025年度分として約154億円が助成される。文科省関係者によると、1回目の公募では国立大学8校と私立大学2校が申請、昨年11月に東北大学だけが認定された。この制度による23年度の運用実績は当期純利益が1167億円の黒字。2回目の公募には、東京大学や早稲田大学などが申請の意向を示しているという。
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