ヤマトホールディングス傘下で共同輸配送のオープンプラットフォームを提供するSustainable Shared Transport(以下、SST)と富士通は1月27日、荷主企業および物流事業者向けの共同輸配送システムを2月1日から稼働開始することを発表し説明会を開いた。また、同日よりSSTはオープンプラットフォームを活用した共同輸配送サービス「SST便」の提供を開始する。

  • 記者説明会の様子

    記者説明会の様子

SSTはオペレーションを標準化し物流の効率化に貢献

持続可能なサプライチェーンの構築に向けて、ヤマトホールディングスは共同輸配送のオープンプラットフォームによって物流の標準化と効率化を目指すSSTを2024年5月21日に設立した。それ以来、SSTは標準パレット輸送(リアル)と標準化された商流・物流情報のデータ連携(デジタル)によるオープンプラットフォームの提供準備を進めてきたという。

現状の物流においてB to Bにまつわる輸送は貸切トラックの利用が主であり、積載率が低く標準化に対応していない積荷が多いとされる。また、個社のチャーター便が増えることで長距離輸送も多くなり、ドライバーの長時間労働が課題となっている。

こうした課題に対して同社が目指すのは、B to B輸送に選択肢として共同輸配送のプラットフォームを提供すること。リアルとデジタルを組み合わせたプラットフォームで需要と供給を最適化するとともに、パレットなどハードとオペレーションを標準化することで、複数社による効率的な輸送を実現する。

  • 物流の課題と解決案

    物流の課題と解決案

さらには、中間拠点を介した幹線輸送の定時運行によって短~中距離のリレー輸送を実現し、ドライバーの長距離運転を削減する。この仕組みにより、安定した稼働と安定した輸配送能力を可能とする。

デジタルでは荷主企業のデータベースと物流事業社のデータベースを活用して、各社のデータを物流情報標準ガイドラインに従って変換する。これにより荷主企業と物流事業者のニーズをマッチングする。同業他社をはじめとする外部からの改ざんや情報閲覧を防ぐために、富士通が持つブロックチェーンなどの技術やサイバーセキュリティの知見が使われる。

  • データ流通プラットフォームのイメージ

    データ流通プラットフォームのイメージ

SSTの代表取締役社長を務める髙野茂幸氏は「当社のオープンプラットフォームは、荷主企業も物流企業も参加しやすいプラットフォームとして運営する。これまでは物流がビジネスを支えていたが、今後は企業が持続可能な物流を選ぶという選択肢を示していきたい。荷主企業と物流企業が協調する共同輸配送の普及が一つの解になれば」と説明した。

  • SST 代表取締役社長 髙野茂幸氏

    SST 代表取締役社長 髙野茂幸氏

共同輸配送を支えるシステムとオープンプラットフォーム

荷主企業と物流事業者のマッチングにより輸配送計画を作成するシステムには、富士通のオファリング「Fujitsu Unified Logistics」によるデータ基盤を活用。荷主企業の出荷計画や梱包の状態(荷姿)、荷物量などの情報と、物流事業者の運行計画に基づいて輸配送計画を作成する。

同システムを活用することで、荷主企業は共同輸配送のパートナーを探すことなく共同輸配送に取り組めるようになる。さらに、同一区間でも複数の時間帯や複数の輸送手段の中からパレットスペース単位で輸送方法を選択できるようになるため、効率的な輸送が期待できるという。効率的に帰り荷を確保できるようになれば復路の空車走行を減少でき、物流事業者は積載率や稼働率の向上、ドライバーの負担軽減や処遇改善が図れる。

また、SSTが手掛けるプラットフォームは、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第二期 スマート物流サービス」プロジェクトにより策定された「物流情報標準ガイドライン」に準拠する。そのため、業種間や企業間で定義が異なるデータでも連携が可能だ。荷主企業や物流事業者は運送手段やドライバー配置計画など輸配送に関する意思決定を迅速化できる。

現在、SSTは宮城県~福岡県の間で1日16便を運航している。同社は今後、既存線便のダイヤ数を拡充するとともに、鉄道や船舶なども含めたマルチモーダルを活用しながら対応エリアを順次拡大するとのことだ。2026年3月末をめどに80線便まで路線を拡大する予定。

  • SSTの定時運行サービス

    SSTの定時運行サービス

ヤマトホールディングス代表取締役社長の長尾裕氏は「2月からSSTが本格的に稼働を開始すれば、パレットやオペレーションを標準化した物流サービスのモデルを社会実装できる。今後のSSTの展開に期待してほしい」と述べていた。

  • ヤマトホールディングス 代表取締役社長 長尾裕氏

    ヤマトホールディングス 代表取締役社長 長尾裕氏

富士通はテクノロジーでプラットフォーム構築を支援

富士通はクロスインダストリーでの社会課題解決に向けて、「Fujitsu Uvance」の取り組みを進めている。また、同社のパーパス(存在意義)実現を支えるマテリアリティ(重要課題)の必要不可欠な貢献分野の一つである「デジタル社会の発展」への取り組み項目として、「責任あるサプライチェーンの推進」を掲げる。

Fujitsu Uvanceは企業や業界の壁を越えたデータ連携基盤として稼働し、各社が持つデータやノウハウを組み合わせて次の経営戦略を支える。今回のSSTとの取り組みにおいても、このFujitsu Uvanceの思想に基づくプラットフォームが構築されるとのことだ。

富士通 代表取締役社長 CEOの時田隆仁氏は「サプライチェーン全体の業務効率化や意思決定のスピードアップには、データをスムーズかつ迅速に共有する必要がある。そのためにも、構造や仕組みが標準化され、誰もが参加でき、安全にデータを連携するデータプラットフォームが必要。富士通はこのオープンなプラットフォームをテクノロジーによって支え、物流・商流分野のデータを連携させる。企業の効率的な輸送能力の向上と、ひいてはGHG(温室効果ガス)の排出削減にも貢献する」とコメントした。

なお、富士通は2025年2月1日にSSTに5000万円を出資する予定。これによりSSTに対する富士通の出資比率は12.5%となる。

  • 富士通 代表取締役社長 CEO 時田隆仁氏

    富士通 代表取締役社長 CEO 時田隆仁氏