ソフトバンク100%子会社のGen-AX(ジェナックス)は1月23日、コンタクトセンターやバックオフィス部門向けに照会応答業務の効率化を支援する生成AI「X-Boost(クロスブースト)」の提供を開始することを発表し、説明会を開いた。

同サービスは導入企業が自社のデータを活用して、AIの精度を継続的に高められる点が特長。親会社であるソフトバンクが持つ法人顧客基盤を生かして販売すると同時に、両社が連携してX-Boostの導入と運用をサポートする。

コンタクトセンターの業務を支えるX-Boostの概要

X-Boostはコンタクトセンターやバックオフィスなどで問い合わせ対応を担う、照会応答業務を支援する生成AIサービス。紹介応答業務とは主に金融業界や保険業界などで、代理店から本店に対する照会などが該当する。コンタクトセンターでも一次応対者からスーパーバイザーなどに照会する業務などがこれに当てはまる。

オペレーターが問い合わせ内容をX-Boostに入力すると、X-BoostはマニュアルやFAQなどの社内データからナレッジを検索し、適した回答案を自動生成してオペレーターの画面に提示する。オペレーターの業務負荷の軽減や対応スピードと品質の向上、コンタクトセンターの対応内容の均一化などが期待できる。

  • X-Boostのデモ画面例

    X-Boostのデモ画面例

同サービスはRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)やエンベディングモデルなどを活用して、より高い回答精度を目指し開発された。また、LLMOps(LLM+Operationsによる造語、LLMの開発と運用における一連のプロセス)機能により、ユーザーがAIの精度を継続的に向上させ、自社の特性に合ったAIへと学習させることができる。

X-Boostは企業の特性に応じて「AIを育てる」ことができる

また、X-Boostは直感的で操作しやすいUI(User Interface)とUX(User Experience)を強みとしている。サービスに照会文を入力する際は、質問内容をそのままコピー&ペーストすればよく、キーワードの抽出など追加の作業が不要。X-Boostが照会履歴やFAQ情報を参照するため、知識や経験が浅い担当者でも問い合わせに対応できるようになるという。

社内に蓄積したナレッジを活用した検索を実現することで回答水準の統一が図れるとともに、生成AIが業務をサポートするため、検索・回答文章作成の時間短縮が期待できる。

また、昨今のAI運用においては、専門スキルや経験を持つ人材の不足が課題とされる。これに対しX-Boostは、LMOpsによりAIモデルを最適化する技術を備える。AIの専門知識を持たない非エンジニアでも、企業が保有する社内データを活用して専用のAIモデルを構築できるという。また、業務現場においてフィードバックと改善を繰り返すワークフローを採用し、継続的な精度向上を促進する。

  • 自社の業務に合わせてAIを学習させる

    自社の業務に合わせてAIを学習させる

同サービスが扱うデータは国内のサーバで管理され、ユーザー企業専用のAIモデルの学習のみで使用する。汎用AIモデルの学習には使用されないため、自社ののデータが外部利用される心配がないとのことだ。

X-Boostの展開は7領域を起点に拡大する計画

X-Boostの展開においては、ソフトバンクがこれまで築いた顧客基盤に対し営業活動を進めるなど、ソフトバンクグループとしての強みを生かす方針だ。また、グループ内で国産LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)の開発を手掛けるSB intuitionsとの連携も強化する。

同社によると、コンタクトセンター領域の市場規模は約10兆円。うち1.1兆円が既存事業者へのアウトソーシングで、9.2兆円が社内コールセンターや簡易窓口業務といった潜在市場となる。X-Boostはこのうち、社内コールセンターや窓口業務が占める潜在市場へアプローチする。

  • コンタクトセンター分野の市場規模

    コンタクトセンター分野の市場規模

特に「保険」「小売」「カード」「銀行・証券」「ソフトウェア」「精密機器」「自動車」の7業界に集中して提供を開始。まずはこれら注力業界の大手企業で成功事例を生み出し、その後に他業界やサプライチェーン上の中堅・中小企業に展開するとのことだ。

Gen-AXの代表取締役社長 CEOである砂金信一郎氏は「当社はコンタクトセンター業務の効率化を支援するため、2025年度中には第2弾となるプロダクトを提供開始予定。これはAIが自動で音声応対するもので、対応業務の8割の自動化を目指している。2027年ころには、広告コンテンツの生成や顧客プロファイリングなどお客様接点がAI化されるサービスを提供したい」と、今後の展開を示した。

  • Gen-AX 代表取締役社長 CEO 砂金信一郎氏

    Gen-AX 代表取締役社長 CEO 砂金信一郎氏