LegalOn Technologiesは1月21日、新たな事業戦略に関する記者説明会を開催した。説明会ではコーポレート領域に対する新規事業の他、AI法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」の新機能について説明がなされた。初めに代表取締役執行役員・CEOの角田望氏が登壇し、2025年の成長戦略として「LegalOn Cloud」の新しいコンセプトについて発表した。
LegalOn Cloudはマルチエージェント化
同社が提供するLegalOn Cloudは、法務業務の基盤を支える標準機能に、「マターマネジメント」「レビュー」「コントラクトマネジメント」など、各社が強化したい機能を自由に追加できるプラットフォーム。ユーザーの業務に必要な機能を組み合わせて使用できるため、拡張性のある柔軟なサービスを提供する。
しかし、角田氏は「現在提供しているLegalOn Cloudには課題がある。それは、現状のAI活用はモジュールごとに人間が指示をするタスクの実行が中心となっていること」だと指摘した。つまり、現状は契約書のレビューをする際には、人が契約書をアップロードしてレビューを開始するボタンを押す、といったアクションが必要となる。
この課題に対し、今後は「マルチエージェント構想」を取り入れるという。これは、各モジュールの専門性を持ったAIエージェントが相互に連携し、人の指示やアクションを待たずに次の業務を自律的に支援する機能。
角田氏は「各モジュールのAIエージェントを相互に連携させることによって、案件の受付からレビュー、電子締結、サイン、契約管理までを一つのプラットフォーム上で自律的に実行させる仕組みを作りたい」と説明した。また、この一連の機能を「LegalOn AI Agents」と呼ぶことも、同氏は示した。
法務にとどまらずコーポレート分野に事業を拡大
続けて、角田氏はコーポレート分野に対する事業拡大を発表した。これまで企業法務の分野でサービスを展開してきた同社だが、今後は管理部門全般を支援する方針だ。その第一弾として、新しい生成AIサービス「AIカウンセル CorporateOn」を発表した。
仕組みとしては、「コーポレートRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)システム」と、コーポレート領域全域にわたる専門知識体系である「コーポレートナレッジグラフ」を活用する。これにより、ワンクリックで社内規程などの社内ルールや社内手続きの確認、人事労務・法務・経理財務・税務などのコーポレート全般にわたる論点の把握が可能となる。
自然言語で質問を入力すると、ワンクリックで生成AIが回答を出力する。また、RAGを活用していることで、社内資料に基づく適切な回答が得られる。RAGとは生成AIによる出力を最適化するプロセスで、モデルが学習済みのデータに加えて社内に蓄積した独自の資料など外部データベースの情報を参照するため、最新情報や正確性が求められるタスクの処理に向いている。回答出力時は引用元も併せて示すため、AIの回答の根拠も確認できる。
CorporateOnはコーポレート部門に必要な専門知識を搭載するとしており、2025年3月までに5000件以上の専門知識を搭載する予定だという。また、その後も継続して知識を拡充する。社内規程やマニュアルなどのファイルデータをそのままアップロードすることで、追加の知識の学習も可能だ。
同サービスは、管理部門に日々寄せられる雑多な相談の初期対応のほか、専門知識や自社固有の知識を確認する際などに有効に活用できるとのことだ。社員からの問い合わせや相談に対応する場面が多い管理部門や上位役職者の負荷軽減と、相談側の時間削減に加え、事案の論点整理や問題点の早期発見を支援する。これにより、会社全体の業務効率化とコーポレートガバナンス・コンプライアンスの浸透に貢献する。
利用料金は、301人が利用する場合、2025年3月末までに導入すると管理者ID当たり月額1万円。ユーザーID当たり月額1900円。初期導入費用30万円。4月以降の導入は管理者ID当たり月額1万5000円。ユーザーID当たり月額2900円。初期費用は同額。なお、3月末までに契約を完了すれば4月以降も改定前の料金が適用される。