アクセンチュアと明治安田は1月16日、2030年3月までのパートナーシップ契約を締結し、生成AIをはじめとする先端技術の活用により、人の提供価値を最大化させる全社横断的なDX(デジタルトランスフォーメーション)プログラムを開始したことを発表した。

会見には明治安田 取締役 代表執行役社長の永島英器氏、アクセンチュア 代表取締役社長/CEO 兼 アジアパシフィック共同CEOの江川昌史氏らが登壇した。本稿では、その会見の一部始終をレポートする。

  • 明治安田 取締役 代表執行役社長の永島英器氏、アクセンチュア 代表取締役社長/CEO 兼 アジアパシフィック共同CEOの江川昌史氏

    明治安田 取締役 代表執行役社長の永島英器氏、アクセンチュア 代表取締役社長/CEO 兼 アジアパシフィック共同CEOの江川昌史氏

パートナーシップ契約の概要

最初に登壇した永島氏は、両社で全社横断的な生成AIなどの先端デジタル技術の活用に向けたパートナーシップ契約を締結したことを発表した。

その上で、パートナーシップでともに目指すゴールとして「デジタルテクノロジーの猛烈な進化に柔軟に対応し、生成AIなどの活用を前提とした業務遂行が可能な会社へ」という目標を掲げた。

「具体的な取り組みとしては、アクセンチュアの伴走型支援を活用し『ヒトづくり』と『モノづくり』の2軸においてデジタル技術の活用を行います。全役職員の変革とコア人財300人の育成、生成AIなどの活用態勢・基盤の整備や業務変革や新たな価値提供に資するアウトプットなどに取り組みます」(永島氏)

  • 明治安田 取締役 代表執行役社長の永島英器氏

    明治安田 取締役 代表執行役社長の永島英器氏

パートナーシップの取り組み規模としては、2029年度末までの約5年間において300億円規模となる投資を行い、コアとなる人財300名を育成するという。

  • パートナーシップでともに目指すゴール

    パートナーシップでともに目指すゴール

これまでの明治安田の生成AIの取り組み

明治安田は、生成AIの登場を受けて社会・事業へのインパクトの大きさを直感し、「全社横断的な検討組織の立ち上げ」「業務導入に向けた検討・試行着手」「経営計画などへの反映検討」といった取り組みを行ってきた。

具体的には、資料作成や社内照会などの日常業務を支援する明治安田版 Chat-GPTである「AIアシスタント」や、コールセンターにおける顧客応対メモの自動作成・営業担当者の顧客対応をサポートするアプリである「デジタル秘書 MYパレット」の導入などを進めている。

しかし検討・試行を進める中で「ハルシネーションなどのリスクへの対応」「AIガバナンス態勢の構築」「今後のテクノロジー進化への備え」「ユースケースの拡大(着想・検討・開発)」といった生成AIの業務実装を進めるために必要な対応をすべて網羅するためには、同社のみでは知見・人財・基盤が不足しているという課題に直面したという。

  • 直面した課題

    直面した課題

そこでそれらの課題を乗り越え、ヒトづくりとモノづくりにおける新たな挑戦を行うために、今回、アクセンチュアをパートナーにして強力に取り組みを推進させることを決めたという。

アクセンチュアをパートナーとした理由について永島氏は、「伴走を通じた価値共創への強いコミットメントで『志を同じくして一緒に歩んでいける仲間』であること。AIなどの活用や実装支援に係る豊富な知見や人財を持つ『上流から下流までカバーするケイパビリティ』があること。ビジネス・プロセス・リエンジニアリングをはじめとする、5年以上の当社の支援実績があり、『明治安田のことを明治安田よりも知る存在であること』、という3点が挙げられる」と語っていた。

社内の専担組織として「デジタルイノベーションHub」を創設

今後は、ヒトづくりとモノづくりを共同で推進する社内の専担組織として「デジタルイノベーションHub」を創設するほか、柔軟性・拡張性あるAI活用基盤として「AIプラットフォーム」を構築する。

「デジタルイノベーションHubの中に、経営戦略上の重要なテーマや取り組みごとにチームを置き、アクセンチュアの伴走を受けながらそれぞれの実装に向けた検討と開発、メンバーの人材育成、また次世代のリーダー人材の養成を進めていきます」(永島氏)

さらに、永島氏はAIなどの本格活用による全役職員の役割支援として「デジタル秘書」の開発を進めていく方針であることも説明した。

最後に永島氏は、今回のパートナーシップ締結について以下のような想いを述べていた。

「メンバーシップ型経営で勝ち抜いていくためには、役職員一人ひとりに『自己革新』を行ってもらう必要があります。今回のアクセンチュアとのパートナーシップの締結は『人の役割の高度化』への挑戦であり、役職員と明治安田にとって自己革新の最大の機会です。人の力を高めることで、『人と人、人と地域の絆』を紡ぐ存在へなっていけたらと思っています」