国際刑事警察機構(ICPO: International Criminal Police Organization)は12月17日(現地時間)、「INTERPOL urges end to 'Pig Butchering' term, cites harm to online victims」において、オンライン詐欺に分類される「豚の屠殺詐欺(Pig Butchering Scam)」という呼称を廃止すると発表した。
代わりに「ロマンスベイティング(romance baiting)」の使用を提唱している。
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INTERPOL urges end to 'Pig Butchering' term, cites harm to online victims
「豚の屠殺詐欺」の問題点
豚の屠殺詐欺という呼称は、詐欺師が被害者のことを「豚」と呼んだことに由来する。この詐欺は、被害者との信頼関係を構築し、仮想通貨などに多額の投資をさせ、最後にすべてを窃取する手法。被害金額を徐々に増加させる様が、豚を肥えさせる様子に似ていることから名付けられた。
この詐欺の被害者は壊滅的な経済的損失を受け、精神的に追い詰められており、そこに「豚の屠殺詐欺」との報道が被害者に恥をかかせ、情報提供を思いとどまらせる原因になっているとされる。国際刑事警察機構は捜査の障害を取り除き、被害者を保護するために新しい用語への変更が必要だと訴えている。
「ロマンスベイティング」の使用を推奨
すでに一部の法執行機関や専門家の間では、「ロマンスベイティング」が使用されている。この用語は被害者ではなく、加害者の行動を的確に表現した用語とされる。
国際刑事警察機構の局長代理を務めるCyril Gout氏は次のように述べている。
言葉は重要です。暴力的な性犯罪、家庭内暴力、オンライン児童虐待などの分野でこれを目の当たりにしてきました。私たちの言葉は被害者にとって重要だと認識する必要があります。被害者への敬意と共感を優先し、詐欺師の犯罪責任を追求するため、言葉を変える時が来ました。
ロンドン大学キングストン校の犯罪学および法医言語学のDr. Elisabeth Carter氏は次のように述べている。
「詐欺師の手法」と「家庭内暴力や強制支配の加害者の手法」との間には明確なつながりがあります。これら犯罪者の用語を採用するのではなく、公共の福祉と被害者支援に目を向けた用語を使用するべきです。
今回の呼称変更の呼びかけは、オンラインの安全性とユーザーの警戒心向上を目的とした国際刑事警察機構の「Think Twice」キャンペーンの一環として実施された。元の呼称があまりに過激なことから、今後はロマンスベイティングの使用が一般的になるとみられる。
なお、ロマンスベイティング(romance baiting)の日本語訳はまだ共通的に使われているものがない。翻訳すると「ロマンスの誘導」「ロマンスのおとり」「恋愛誘導」といった言葉になるが、このままカタカナ表記が使われる可能性もある。今後、日本語訳がどのようになっていくかも注意しておきたい。