KDDIは12月18日、ICTなどを活用して離島の課題解決を図る国土交通省の実証調査「スマートアイランド推進実証調査」に採択され、長崎県五島市の島山島における通信不感エリアにおける遠隔養殖の実証調査を11月29日に開始したことを発表した。

今回の実証では、StarlinkキットとWi-Fiルーターを洋上の生け簀に設置する。ウミトロンが設置したスマート給餌機で真鯛に給餌し、スマート給餌機のカメラを通して陸上のスマートフォンやパソコンなどから遠隔で生け簀の様子を確認。給餌設定やAIによる食欲の判定を実施する。

  • 実証のシステム概要図

    実証のシステム概要図

実証の背景と目的

離島においては養殖に必要な飼料の運送費が高額となり、さらに生け簀が遠方の場合には船の燃料代も大きな負担となる。島民の流出や高齢化による労働力不足などを背景に、養殖事業者の経営体数は減少している。これらの課題を解決するためにスマートデバイスの活用が期待されるが、通信インフラは島ごとに異なり、環境に適した個別システムの構築は採算性の低さが課題。

これに対しKDDIは、通信不感エリアとなる海面養殖場においてデータ通信を可能とし、遠隔操作による給餌の実現などを目指す。場所にかかわらず管理可能な環境を構築し、離島における持続可能な産業モデルの構築に貢献するという。

調査についての概要

実証ではStarlinkキットとWi-Fiルーターを太陽光発電により駆動させ、通信網を構築。AI・IoT搭載のスマート給餌機「UMITRON CELL(ウミトロンセル)」を活用して真鯛養殖事業を支援することにより、給餌量最適化、燃料費削減、労働負荷軽減などの経営改善効果を確認する。また、調査から得られた改善効果を共有し、持続可能な産業モデルの構築を目指すとしている。

ウミトロンのスマート給餌機について

ウミトロンが提供する「UMITRON CELL」は、スマートフォンやクラウドを活用して生け簀の遠隔での給餌管理が可能な水産養殖向けスマート給餌機。水産養殖現場で課題となっている労働環境の改善、環境保全、食の安定供給を目指して開発された。計測結果はスマートフォンやパソコンなどから確認可能。

  • 生け簀に設置したStarlinkと太陽光パネル

    生け簀に設置したStarlinkと太陽光パネル

  • スマートフォンによる給餌の確認

    スマートフォンによる給餌の確認(左が給餌前、右が給餌時)