日本ヒューレット・パッカード(HPE)は12月12日、2025年度の事業方針説明会を開催した。同社は「Leading Edge-to-Cloud Company」になることを目指しており、その中核を担うAIやハイブリッドクラウドなどに関する戦略を発表した。

同説明会に登壇した代表執行役員社長の望月弘一氏は「ベンダーニュートラル・クラウドニュートラルな第三極のクラウドプラットフォームを提供し、顧客のビジネス変革を支援することがわれわれの使命。組織が必要とするデータ駆動型トランスフォーメーションを推進していく」と切り出した。

  • 日本ヒューレット・パッカード 代表執行役員社長 望月弘一氏

    日本ヒューレット・パッカード 代表執行役員社長 望月弘一氏

NVIDIAと協業するHPE、望月社長「AIをシンプルに」

HPEはAIのライフサイクル全体にソリューションを提供している。AIや機械学習(ML)に求める要件は多岐にわたり、AIモデルのトレーニングや推論、生成AIとハイパフォーマンスコンピューティングの準備、そしてセキュリティやリスク、コンプライアンスの強化などさまざまだ。

同社は「HPE AI」を通じて、同社が持つサービスと統合の専門知識を生かし、AIモデルの開発に加えて、トレーニングやチューニング、デプロイと推論、そしてデータの取得や準備・管理までを提供する。加えて、シームレスなデータアクセスを実現するためのグローバルデータプレーンも併せて提供している。

  • HPEはAIのライフサイクル全体にソリューションを提供

    HPEはAIのライフサイクル全体にソリューションを提供

望月氏は「AIを十分に活用できている企業はほんの一握りだ。全社で横断的にAIを活用するためにはどうしたらいいのか、そしてそれを実装していくためにはどのような手順を踏めばいいのかといったことに対して多くの企業が苦労している。大きな参入障壁となっている要件をわれわれのサービスを通じて乗り越えてもらいたい」と述べた。

「企業向けにAIをシンプルにする」(望月氏)ことを目指し、同社は7月31日、NVIDIAと共同で「NVIDIA AI Computing by HPE」を発表した。NVIDIA AI Computing by HPEは、HPEとNVIDIAが共同開発した企業の生成AI導入を支援する概念。HPEのサービスとNVIDIAの各技術を組み合わせワンパッケージにして提供し、企業が直面する生成AI導入のハードルを下げようとする取り組みだ。

  • NVIDIA AI Computing by HPE

    NVIDIA AI Computing by HPE

具体的にはNVIDIAのGPUやCPU、AIモデルをHPEのAIサービスと組み合わせ、HPEのクラウドを通じて提供する。企業のAIワークロードに合わせた構成で提供でき、「日本の企業がAIの力を最大限に活用できる環境を整えていく」(望月氏)とのことだ。

同説明会にはNVIDIA 日本代表 兼 米国本社副社長の大崎真孝氏もビデオ登壇し、「NVIDIAのプラットフォーム戦略を推進するうえで、HPEとの協業は極めて重要。一般的にAIシステムは従来のITシステムと異なる点が多く、多くの企業ではノウハウ十分に蓄積されていないため、導入のハードルが高いのが現状だ。 開発者にNVIDIAのプラットフォームを使いこなしてもらうためには、そのプラットフォームを熟知し、ソリューションとして仕上げられるパートナーと連携するのが最適解である」と述べた。

  • NVIDIA 日本代表 兼 米国本社副社長 大崎真孝氏

    NVIDIA 日本代表 兼 米国本社副社長 大崎真孝氏

ハイブリッドクラウド環境は「偶然」から「設計」へ

HPEはAIだけでなく、ハイブリッドクラウドに関する戦略にも注力している。

望月氏は「クラウドに移行できるものはすでに移行している顧客企業は多い。ただ、全体を見るとクラウドに移行できるのは3割でしかない。残り7割は、セキュリティやデータガバナンス、コンプライアンスなどさまざまな理由でクラウドに移行できないのが現状だ」と述べ、「結果としてハイブリッドクラウド環境ができる。われわれはこれを『偶然によるハイブリッドクラウド』と呼んでいる。偶発的なハイブリッドクラウド環境では、点在するデータが統合管理されていないケースが多い。つまり、データ活用の大きな阻害要因になっている」と説明した。

  • HPEは「Hybrid Cloud by Design」の実現を支援

    HPEは「Hybrid Cloud by Design」の実現を支援

ハイブリッドクラウドに求められる要件もさまざまだ。コストの予測可能性と透明性、ハイブリッドAIやエッジへの展開、セキュリティとコンプライアンスの強化など多岐にわたる。

そこで同社は「HPE Hybrid Cloud」を通じて「偶然ではなく、設計によるハイブリッドクラウド環境『Hybrid Cloud by Design』の実現を支援していく」(望月氏)とのことだ。

その目標を実現するために、同社は2025年度の施策として、パートナーソリューションとHPEアセットの融合に加えて、Edge-to-Cloudサービスを拡充していくという。

  • 2025年度は3つの施策を実行していく

    2025年度は3つの施策を実行していく

「多くの企業にAIを活用してもらうためのエンタープライズAIと、手軽に使ってもらうためのサービスカタログ、そして仮想化の選択肢も増やしていきたい。Edge-to-Cloudを引き続き進化させていく」(望月氏)