米GitHub日本法人のGitHub Japan(以下、GitHub)は11月27日、国内のユーザー動向について説明会を開いた。年次レポート「Octoverse」2024年版によると、日本でGitHubを利用する開発者は前年比23%増となり計350万人を超え、世界で9番目に大きな開発者コミュニティとなっているとのことだ。このままの成長率が続けば、ドイツなどを抜き2028年には7番目に大きなコミュニティになると予測されている。
リージョナルディレクターの山銅章太氏は「以前のGitHubはソフトウェア企業向けのツールだったが、昨年あたりから製造業や金融業、医療業界など、あらゆる産業でサービス開発のために使われるようになっている。一般的なソフトウェア開発のみならず、IoTデバイスの開発やAIのトレーニング、企業内で業務効率化を促すためのツール開発など、用途も広がっている」と説明した。
日本のGitHubユーザーは350万人を突破
上記の通り、日本市場に着目するとGitHubを利用する開発者数は350万人に上る。中でも生成AIに関する活動が顕著に拡大しており、日本は、GitHub上で生成AIプロジェクトに貢献する開発者コミュニティの規模が前年比で35%増加し、世界6位だ。日本のプロジェクトへの貢献度は前年比で50%増加しており、世界で7位だという。
「日本の生成AI導入や活用が遅れているという報道もあるが、GitHub上のデータを見る限り日本の生成AI活用は非常に活発」(山銅氏)
また、日本の開発者はオープンソースへの貢献度も高いそうだ。海外のプロジェクトも含めてさまざまなプロジェクトに日本の開発者が貢献しており、その規模は世界で10位だという。
生成AIを搭載する「GitHub Copilot」の採用も進んでいる。山銅氏はソフトウェア開発においてAIの活用が進む背景について、「直接的な生産性向上につながりやすい」「AIがプログラミングの学習支援にも寄与している」「元々GitHubを開発プラットフォームとして使っていればスムーズにGitHub Copilotを使い始められる」「プログラミング言語の文法や構文のようにパターン化された作業はAIの得意領域」の4点を挙げた。
国内での利用規模は公表されていないが、グローバルでは有料ユーザーが180万人、7万7000社がGitHub Copilotを利用しているという。
「GitHub Spark」で10億人の開発者を支援するプラットフォームに
AIを搭載したGitHub Copilotは、コーディング支援による効率化の支援が主な目的だった。GitHubはこれをフェーズ1と位置付けており、今後は次なるフェーズ2へ進むとしている。
その具体的な取り組みの一つが、GitHub Copilotのマルチモデル化だ。以前はOpenAI Codexをベースとしたモデルによりコードを生成していたが、新たにAnthropicのClaude 3.5 Sonnet、GoogleのGemini 1.5 Pro、OpenAIのGPT-4o、o1-preview、o1-miniへの対応開始を発表している。
「単に複数モデルの中から好みのモデルをユーザーが選択するだけでなく、開発者の作業内容をGitHubが読み取って最適なモデルを提案するといった使い方もできる。マルチクラウドや複数のアプリケーションを使った開発も当たり前になる中で、GitHubがAIモデルのハブとしても機能する」(山銅氏)
年次イベント「GitHub Universe」では、CEOのThomas Dohmke氏が「1 billion developers(10億人の開発者)」のビジョンを示したという。これを実現するために打ち出したツールが「GitHub Spark」である。
GitHub YouTubeチャンネルより
同ツールはプログラミング言語を記述しなくても、日本語など自然言語でアプリケーションを開発できる。デザイナーやプロダクトマネージャー、セキュリティ担当者など、ソフトウェアエンジニア以外の人材も開発者として支援するとのことだ。自然言語でプロトタイプを迅速に作り、その後に開発者がプログラミング言語で微調整する、といった使い方もできる。
生成したプロトタイプは外部にも共有でき、外部のコミュニティに公開すればブラッシュアップして機能やユーザビリティを高められるとのことだ。
「GitHub Sparkによって、ソフトウェア開発を特殊な専門家だけのものではなく、民主化できるだろう。これによってアイデアの具現化を加速できるようになるはずだ」(山銅氏)