リコージャパンは11月20日、社会課題の解決によって価値提供を目指すパブリックサービスに関する説明会を開いた。8月に同社が開催した説明会で、社長の笠井徹氏が2024年度の注力領域として「AI」「セキュリティ」「脱炭素」を挙げていた。同社はパブリックサービスにおいて、脱炭素への取り組みとして、GX(グリーントランスフォーメーション)を強化する。
パブリックサービス本部で本部長を務める花井厚氏は「GX事業は年成長率(CAGR)30%以上で急成長している。政策の理解と社内での実践をベースにソリューション強化と人材育成を両輪で進め、オフィスプリンティング、オフィスサービスに続くリコージャパンの三本目の柱として育てていく」と自信を見せた。
リコージャパンのGXの取り組み
リコージャパンは2023年4月、地域社会課題の解決に向けた価値提供を目的にパブリックサービス本部を立ち上げた。自治体事業部、GX事業部、ヘルスケア事業部から構成される。なお、脱炭素に取り組む企業や自治体を支援するGX事業部は、24年10月にスマートエネルギー事業部から名称が変更された。
同社は各地域のGXを促進するために、自治体や地銀、信金との連携協定を進める。これまでに全国で79団体と「脱炭素」「SDGs」「DX」をテーマとした連携協定を締結したほか、151行(地銀33、信金118)との協定も締結している。
リコーグループの環境分野の取り組みは1976年にさかのぼる。この年に環境推進室を設置して以来、1999年のISO14001認証取得、2000年のエコマーク取得、2017年のRE100参加表明などを経て、脱炭素と経営の同軸化に至った。
ZEB(Net Zero Energy Building)化への関心が高まる
最近の社内実践としては、事業所のZEB(Net Zero Energy Building)化が代表的な例となる。ビル内で使用するエネルギーの削減や創出により100%以上の一次エネルギー消費量の削減を実現している建物が「ZEB」、75%以上の削減を実現している建物が「Nearly ZEB」、50%以上の削減を実現している建物が「ZEB Ready」として認定される。
同社は3事業所のZEB化を達成したほか、7事業所のNearly ZEB化、8事業所のZEB Ready化をこれまでに完了。計18事業所の運用で得たノウハウを顧客にも展開する。
「建替えに伴うZEB化はもちろんだが、最近は特に改修によるZEB Ready化に関心が集まっている。1985年設立の御殿場事業所をZEB Ready化したところ、24年上期だけで111社996人が見学に訪れ、36億円の案件創出につながった。コロナ禍の前は循環型リサイクルの要望が多かったが、コロナ禍後はカーボンニュートラルの相談が増えている」(花井氏)
具体的な支援として、「脱炭素STEP伴走サービス」を提供する。これは、リコーグループの社内実践に基づく脱炭素ノウハウを、6つのステップで伴走型でサポートするというもの。STEP1は脱炭素に取り組む目的を理解し、経営に落とし込む段階。その後にCO2排出用の可視化や具体的な削減案の検討に入る。
STEP4以降は3~5年単位のロードマップを策定して、エネルギーの削減や創出、蓄電池などによるエネルギー融通によって目標達成を具体的に推進する。このサイクルを回すことで経営の成長にも寄与するとのことだ。
24年度のGX事業の進捗
リコージャパンは現在、GXを伴走型で支援する人材の育成にも注力している。これまでに40人が環境省認定GXアドバイザーを取得、302人がサステナブル経営 / CSR資格を取得した。さらには、施工関連の資格取得者も増加しているという。これにより、23年度下期と比較して24年度上期は脱炭素ロードマップの策定が500件以上増加している。
中でも、自治体によるGXロードマップ策定と実行支援が進んでいるそうだ。これまでに39自治体の地域脱炭素ロードマップを策定しており、現在新たに18自治体に提案中。このうち、11自治体が庁舎のZEB化や省エネ / 創エネの取り組みに着手している。24年度上期には新たに4自治体が具体的な取り組みに着手し始めた。
こうした取り組みの結果、24年度上期で1万3742トンのCO2を削減したとのことだ。前年同期比では153.1%増となる。特に製造業からの引き合いも多く、CO2削減の約半分は製造業によるものだ。