ZOZO NEXTは11月5日、空間コンピューティング技術を用いて高解像度の3Dで表現された360度のバーチャル空間で、場所や時間にとらわれない次世代のショッピング体験ができるApple Vision Proアプリをファッションブランド「ANREALAGE」の先行受注会向けに提供することを発表した。
Apple Vision Pro は、Appleが初の空間コンピュータとして発売を開始した複合現実ヘッドセット型コンピュータ。同製品を用いた一般顧客向けの受注会が11月16日~24日に渋谷PARCOで開催される。
本稿では、受注会に先駆けて行われた、Apple Vision Proアプリを体験する報道関係者向け個別体験会の様子をレポートする。また、アプリ開発責任者である同社 MATRIX本部 XR/AI部 ディレクターの玉村雄大氏が語ったApple Vision Proアプリの開発背景も紹介する。
Apple Vision Proアプリの特徴
ZOZO NEXTは、「Create the future of fashion and the NEXT Big Thing.」をミッションに掲げ、ファッション領域におけるユーザーの課題を想像しテクノロジーの力で解決することで、より多くの人がファッションを楽しめる世界の創造を目指す企業。
そんな同社が開発したApple Vision Proアプリでは、「自然」と「デジタル」という相反する2つを融合させた特別なバーチャル空間で、高解像度の3Dで表示されるバッグや洋服などの新作商品、合計11型をチェックすることができる。
Apple Vision Proを装着して、アプリ内のバーチャル空間に飛び込むことで、展示されているANREALAGEの商品をピックアップして1点ずつ回転させることや、距離を近づけて細部の仕様や形状・素材感を確認できたりなど没入感を感じることができる。
この「距離を近づけて細部の仕様や形状・素材感を確認できる」という点は、玉村氏もアプリの特徴の1つとして挙げている。筆者もApple Vision Pro を装着して、ANREALAGEのバーチャルな店頭体験を体験させてもらったが、バッグの素材であるレザーやキャンバス地といった素材感を店頭で見ているときと遜色なく確認できる。さらに、簡単な手元の操作でカラーバリエーションの切り替えなども可能なため、本物の商品を手に取って選んでいるかのような感覚を味わえた。
玉村氏は、このアプリのもう1つの特徴として、「アプリ内から注文予約ができる」という点を挙げた。
「渋谷PARCOで行われる受注会もそうですが、実際にこのアプリを通して注文予約できる点が次世代のショッピング体験として、かなり新しい取り組みではないかと自負しています。特にファッション業界では希少な事例だと思うので、新しい購買体験の先駆けになれれば良いなと思っています」(玉村氏)
デザインのコンセプトは「現実世界×非現実世界」
今回、取り組みを行う「ANREALAGE」のブランド名は、「A REAL-日常」「UN REAL-非日常」「AGE-時代」を組み合わせた名称。アプリの世界観のコンセプトである「現実世界と非現実世界をシームレスに融合させる」というテーマの大元にもなっている。
このコンセプトを実現するために、空間内にはデジタル感を彷彿とさせるグリッド(格子状のライン)を基調としてデザインしている一方で、天井を見上げると刻一刻と色が変わっていく空の様子を眺めることもできる。
これにより、デジタル空間の中で自然の流れを感じることができ、まさに「現実世界と非現実世界をシームレスに融合させる」というテーマにふさわしい空間に仕上がっている。
最後に玉村氏は、空間コンピューティング技術をつかったショッピング(空間コマース)の将来について、以下のように語った。
「メタバースへの注目により物理的な世界とバーチャル空間との融合が急速に進む中、今後も技術の進歩やお客様からのニーズが拡大していくと考えております。現在も実店舗とECそれぞれの良さがあるように、ECと空間コマースもそれぞれの良さを生かしながら、お客様がファッションを楽しむ場所として活用いただけ、現実とバーチャルのシームレスな融合による新たな体験の創出を目指して取り組みを進めていきたいと思っています」(玉村氏)