通信大手3社が〝楽天包囲網〟を構築─―。
NTTドコモは10月1日、申し込み手続きをオンラインで受け付ける格安通信プラン「アハモ」の月間データ通信量を従来の20ギガバイト(ギガは10億)から30ギガバイトに引き上げた。月額料金は2970円のままで、事実上の値下げとなる。
するとKDDIは10月17日、携帯通信のサブブランド「UQモバイル」の新料金「コミコミプラン+(プラス)」を11月12日に始めると発表。月3278円で30ギガバイトのデータ容量と、1回10分以内の国内通話かけ放題をセットにした。
さらにソフトバンクも10月25日、オンライン契約専用「ラインモ」で、月間データ量20ギガバイトのプランの料金を2970円に据え置いた上で、11月から30ギガバイトまで利用可能にすると発表した。
大手3社が実質値下げで足並みを揃えた背景には、楽天モバイルの存在がある。
同社が展開する「楽天最強プラン」はデータ容量無制限で3278円。10月18日に契約数が損益分岐点の一応の目安とされる800万回線を突破。700万回線を超えたのは6月で、スマートフォン普及率が頭打ちとされる中、4カ月で100万回線を上積みしたことになる。
楽天グループの24年1-6月期決算では、最終損益が759億円の赤字だったが、赤字幅は前年同期(1399億円の赤字)から大幅に縮小した。
従来「長時間、動画をスマホで視聴する学生などからの支持が厚い」(業界関係者)との評価があったとは言え、ここまで楽天の急激な勢力拡大を想像する向きは少なかった。ソフトバンクの宮川潤一社長は楽天に対し「脅威だ。どこから、そういう純増が湧いて出ているのか」と驚きを隠さない。
今後の焦点は大手3社の警戒感が強まる中で、楽天モバイルが通信品質を高めて勢いを維持できるかだ。
後発の同社は、通信設備整備の遅れが指摘されてきた。6月からは携帯電話の電波がつながりやすい周波数帯「プラチナバンド」を活用したサービスを始めたものの、普及は道半ば。営業赤字続きで財務の懸念も払拭されていない中、地道な投資を続けられるかが試される。