石膏(せっこう)像工房の堀石膏制作は日本で唯一、石膏像のECサイトを運営している。石膏像の市場は数十年の間に縮小し続けているが、いち早くECサイトを開設したことで、現在、国内の需要のほとんどを同社の石膏像が占めている。
以前は国内にも石膏像工房が十数社あったが、現在はほとんどが廃業してしまったという。国内には同社を含め2社のみが残っている。市場は縮小しているものの、工房が減少しているため、需要と供給のバランスが取れている。
▲工房の様子。脇本壮二代表自ら製作
<ECサイト開設で利益率が大幅アップ>
脇本壮二代表は祖父から事業を引き継いだ三代目だ。職人として石膏像を制作しながら、2010年にECサイトを開設した。開設当初から1人でサイトの運営している。
ECサイトを開設する前は、石膏像を教材に特化した卸業者や画材店に卸していたが、利益率の低さが課題だったという。
価格の決定権が握れず、売り上げも落ち込んだことでECサイトの開設を視野に入れ始めた。
「本当はもっとはやくECサイトを開設したかったが、テクニカルなことが分からなかったので、2008年ごろからアメーバブログで発信を始めたり、試行錯誤していた」(脇本代表)と話す。
▲脇本壮二代表は約200種の石膏像についてまとめた「石膏像図鑑」も発売している
サイト開設から5~6年は卸と自社ECサイトの両軸で販売していた。2015年ごろから、ECサイトの売り上げが安定してきたという。現在、卸販売の売り上げは全体の15%ほどで、大半を自社ECサイトで売り上げている。
「自社で顧客に直接、販売できるようになったことで、利益率はかなり上がった。卸値が1万数千円の商品が、5~6万円で販売できる」(同)と話す。
<自らの手で国内の需要と供給をコントロール>
2020年以降には、美容クリニックがインテリアとして全身像を購入した。百貨店がショーウィンドーの展示用に首像などを合計10体購入し、50万~60万円の売り上げとなった。
「商品の制作もサイトの管理も1人で行っている。手に負えないほど注文が来てしまったら、需要が高まっているということなので、販売価格を上げるなどしている。国内の石膏像の需要と供給を調整しているような感覚だ」(同)と話す。
▲制作の様子
今後、事業を拡大することは考えていない。ただ、国内に残された貴重な工房であるため、使命感を持って長年の技術を生かしていきたいという。