10月29日~同31日の間にNEC、日立製作所と富士通の3社が2024年度第2四半期の決算を発表した。本稿では各社の決算状況を紹介する。

NECの上期業績は増収増益、NECネッツエスアイをTOB

まずは、10月29日に発表したNEC。同社は四半期ではなく、第1四半期と第2四半期を含めた2024年度上期の数値となる。

売上収益(日本航空電子工業(JAE)の非連結化の影響を除く)は前年度比3.5%増の1兆4867億円、Non-GAAP営業利益(同)は同252億円増の648億円、調整後営業利益は同33.2%増の610億円となった。なお、第2四半期のみの数値は売上収益が同5.2%減の7964億円、Non-GAAP営業利益は同30億円増の486億円、調整後営業利益は同30億円増の483億円となっている。

NEC 取締役 代表執行役社長兼CEO(最高経営責任者)の森田隆之氏は「前年度比で増収増益となり、上期実績は当社の想定線であり、年間予算の達成に向けて順調に進捗している。セグメント別もITサービス、社会インフラともに増収増益となり、その他はJAEの非連結化により減収減益となった」と話す。

  • NEC 取締役 代表執行役社長兼CEO(最高経営責任者)の森田隆之氏

    NEC 取締役 代表執行役社長兼CEO(最高経営責任者)の森田隆之氏

セグメント別ではITサービスの上期における売上収益は前年度比5.6%増の8906億円となり、国内外ともに増収。調整後営業利益は国内の売上増加に伴う利益増と、海外でのAvaloqを中心とした利益改善により増益。

社会インフラの上期における売上収益は前年度比2.1%減の3570億円となった。テレコムサービスの売上収益はワイヤレス事業の非連結化とグローバル5Gで減収となったが、調整後営業利益は開発費やリソースシフトなどを含む費用効率化により改善した。

10月29日には上場子会社であるNECネッツエスアイの株式に対する公開買付け(TOB)を開始すると発表。NECネッツエスアイを完全子会社化したうえで、事業再編を行い、NECグループ内に分散している関連リソースを統合し、全国の自治体やSME(中堅・中小企業)向けビジネスを強化していくことを目的としている。

日立は売上収益を上方修正

続いては、10月30日に発表を行った日立だ。同社の第2四半期における売上収益は前年同月比11%減の2兆3345億円、純利益が同16%減の1169億円だった。中核事業である「IT(デジタルシステム&サービス:DSS)」と「環境(グリーンエナジー&モビリティ(GEM))」は生成AIブームを追い風に好調だった一方で、自動車部品の日立Astemoの持ち分法投資損益の悪化が業績に響く格好となった。

日立製作所 執行役専務 CFO(最高財務責任者)の加藤知巳氏は「DSSとGEMの上期(4~9月)の受注額はそれぞれ1兆5222億円(前年同期比9%増)、3兆1154億円(同42%増)と、メガトレンドを捉えた成長モメンタムは継続している」と説明している。

  • 日立製作所 執行役専務 CFO(最高財務責任者)の加藤知巳氏

    日立製作所 執行役専務 CFO(最高財務責任者)の加藤知巳氏

急成長を続けている「IT」「エネルギー」「鉄道」などの分野は、生成AIの普及により高まる送電網設備の更新需要や、再生可能エネルギー、データセンター関連ソリューションが好調となり、第2四半期における鉄道分野の受注高は7242億円と前年同期比290%増となっている。

また、送配電子会社の日立エナジーの業績も好調であり、欧米を中心に120カ所以上の生産拠点を持つ。データセンターや再生可能エネルギー関連での需要拡大を見込み、2027年までに送配電機器の増産に45億ドル(約7000億円)の投資を発表し、北米や欧州、インドなどの工場に投資し、送配電機器を増産を計画している。

同社の2025年3月期通期の見通しについては、売上収益は前期比6%減の9兆1500億円、調整後営業利益は16%増の8750億円と、従来予想からそれぞれ1500億円、200億円引き上げた。純利益は2%増の6000億円の予想を据え置いている。

富士通は減収、通期の営業利益を下方修正

最後は10月31日に決算を発表した富士通。2024年上期の連結合計における売上収益は前年比0.9%減の1兆6966億円、調整後営業利益は同287億円増の795億円となり、サービスソリューションは増収したが、ハードウェアとユビキタスソリューションが減収となった。調整後営業利益率は同1.7ポイント増の4.7%となり、上期としては連結ベースでも過去最高となった。なお、第2四半期のみの連結合計の数値は売上収益が8666億円、調整後営業利益が558億円となっている。

富士通 代表取締役副社長 CFOの磯部武司氏は「成長ドライバーであるサービスソリューションは増収に加え、力強いペースで採算性の改善が進んだ。ハードウェアソリューションは前年の大型商談の反動と円安の影響で減収減益、デバイスソリューションは円安が追い風となり、若干ではあるが増収増益となった」と述べている。

  • 富士通 代表取締役副社長 CFOの磯部武司氏

    富士通 代表取締役副社長 CFOの磯部武司氏

事業別セグメントでは、主力のサービスソリューションは増収増益基調が継続し、売上収益は前年比3.4%増の1兆175億円、調整後営業利益は同252億円増の887億円と増収効果に加えて採算性改善が進み、調整後利益率は同2.3ポイント増の8.7%となり、いずれも上期としては過去最高となっている。

富士通が事業ポートフォリオ変革の要と位置付けるFujitsu Uvanceは、上期の受注実績は前年比30%増の2231億円、売上実績は同31%増の2007億円となり、サービスソリューション全体における売上構成比は20%を占める。2024年度の売上目標は同22%増の4500億円となり、計画を上回る形で進捗している。Uvanceは、中期経営計画の最終年度である2025年度に売り上げ7000億円を計画し、売上構成比を30%まで引き上げる考えだ。

ハードウェアソリューションは前年比4.4%減の4566億円となり、システムプロダクトは前年の国内におけるサーバ・ストレージの大型商談(公共系)の反動で減収し、減収影響に加えて為替影響による部材調達コストが上昇した。ネットワークプロダクトは前年並に推移し、次の成長サイクルに向けた開発投資を継続する。

ユビキタスソリューションは前年比16.9%減の1086億円となり、今年4月で欧州でのビジネスを終息し、国内ビジネスへの集中により採算性を改善した。デバイスソリューションは同3.3%増の1474億円と為替によるプラスもあり好転した。

以上のように3社の決算は明暗が分かれたように思う。NECは増収増益でありNECネッツエスアイのTOBにより、勢いを増している。また、日立は通期の売上収益を上方修正し、送電、富士通は減収、そして通期の営業利益を下方修正している。ただ、富士通は主力であるサービスソリューション自体は増収増益のほか、Uvance事業は好調であることから、これからの巻き返しに期待したいところだ。