富士通は10月31日、オンラインで2024年度第2四半期の決算説明会を開催した。同社 代表取締役副社長 CFO(最高財務責任者)の磯部武司氏が第1四半期~第2四半期を含めた上期の業績を説明した。
サービスソリューションは増収増益も連結合計は減収
2024年上期の連結合計における売上収益は前年比0.9%減の1兆6966億円、調整後営業利益は同287億円増の795億円となり、サービスソリューションは増収したが、ハードウェアとユビキタスソリューションが減収となった。調整後営業利益率は同1.7ポイント増の4.7%となり、上期としては連結ベースでも過去最高だという。
磯部氏は「成長ドライバーであるサービスソリューションは増収に加え、力強いペースで採算性の改善が進んだ。ハードウェアソリューションは前年の大型商談の反動と円安の影響で減収減益、デバイスソリューションは円安が追い風となり、若干ではあるが増収増益となった」と振り返った。
事業別セグメントでは、主力のサービスソリューションは増収増益基調が継続し、売上収益は前年比3.4%増の1兆175億円、調整後営業利益は同252億円増の887億円と増収効果に加えて採算性改善が進み、調整後利益率は同2.3ポイント増の8.7%となり、いずれも上期としては過去最高となっている。
国内市場を中心にDX(デジタルトランスフォーメーション)やモダナイゼーションのデマンド拡大が継続し、前年比7%の増収となった。国内における受注状況は上期が前年比99%前年並となり、エンタープライズ(産業・流通・小売り)は同103%とDX・SX(サステナビリティトランスフォーメーション)関連や基幹システムのモダナイゼーション案件などが継続して拡大し、モビリティ、製造、流通などの範囲で活発な受注増加が続いている。
ファイナンスビジネス(金融・保険)は前年比109%で金融機関向けの基幹業務システムの大型商談を複数獲得。パブリック&ヘルスケアは90%で前年上期に公共向けで複数年契約の大型案件の反動があった。ミッションクリティカル他は111%と前年並ではあるが、基幹システム更改など複数の大型商談を獲得し、下期についてもナショナルセキュリティを中心に大型案件が視野に入っているという。
磯部氏は「国内ビジネスは前年並の水準だが、パブリック領域で前年に獲得した複数年契約の大口案件の反動が大きく影響している。エンタープライズ、ファイナンス、ミッションクリティカルでは前年を上回る商談獲得を積み上げることができた。受注残高は堅調に積み上がり、商談パイプラインに動きに大きな変化はなく、確実に商談が拡大するトレンドが継続している。下期の大型案件も視野に入り、売上収益は増収基調を継続できる」と力を込めた。
海外ビジネスはで欧州と米国は前年上期に複数年契約の大型受注の反動で欧州が前年比85%、米国が75%と落ち込んだが、アジアパシフィックはオセアニアで金融系や小売系の更新案件を獲得し、同125%となった。
富士通が事業ポートフォリオ変革の要と位置付けるFujitsu Uvanceは、上期の受注実績は前年比30%増の2231億円、売上実績は同31%増の2007億円となり、サービスソリューション全体における売上構成比は20%を占める。2024年度の売上目標は同22%増の4500億円となり、計画を上回る形で進捗している。Uvanceは、中期経営計画の最終年度である2025年度に売り上げ7000億円を計画し、売上構成比を30%まで引き上げる。
モダナイゼーションビジネスは前年比69%増の828億円となり、DX化やクラウド化への導線として需要が拡大し、レガシ資産からのDX意向を戦略的に進め、新市場・波及売上を創出しているという。
ハードウェアソリューションは前年比4.4%減の4566億円となり、システムプロダクトは前年の国内におけるサーバ・ストレージの大型商談(公共系)の反動で減収し、減収影響に加えて為替影響による部材調達コストが上昇した。ネットワークプロダクトは前年並に推移し、次の成長サイクルに向けた開発投資を継続する。
ユビキタスソリューションは前年比16.9%減の1086億円となり、今年4月で欧州でのビジネスを終息し、国内ビジネスへの集中により採算性を改善した。デバイスソリューションは同3.3%増の1474億円と為替によるプラスもあり好転した。
営業利益を下方修正、売上収益は変更なし
通期の業績見通しは調整後営業利益3300億円に変更はないが、調整前営業利益を3100億円に下方修正した。これは上期に計上した一過性の損失200億円として、ポスティングやリスキル、外部転進などによる人材最適配置と生産性向上を加速するため、間接部門の幹部社員を対象に期間を限定し、セルフプロデュース支援制度を拡充を織り込んだためだという。売上収益については変更はなく、前年比0.1%増の3兆7600億円を計画している。
磯部氏は計画に対する進捗について「上期実績は計画通りに推移した。セグメント別ではサービスソリューションは採算性改善を中心にプラス、ハードウェアソリューションとユビキタスソリューションは為替変動などもあったが計画通りとなった。デバイスソリューションは電子部品の需要回復のタイミングが想定より遅れており、マイナスだ。サービスソリューションに関する市場のデマンドも想定通りに推移し、上期の国内ビジネスは前年並の受注水準だったが大型案件の獲得時期も影響しており、下期に獲得予定の商談パイプラインを見る限りではデマンドの拡大基調に大きな変化はない。引き続き、売上収益の拡大と採算性改善の両輪で計画達成に向けて取り組む」と述べていた。
一方、同日には2025年4月1日を効力発生日として、連結子会社である富士通総研(FRI)と富士通アドバンストシステムズ(FASYS)を吸収合併を発表した。2社の吸収合併は2023年5月24日に公表した中期経営計画にもとづくものとなり、コンサルティングビジネスの強化と、重点戦略の一つとして掲げた「事業モデル・ポートフォリオ戦略」におけるサービスソリューション拡大の一環となる。
FRIは1986年に同社グループのコンサルティング会社・シンクタンクとして設立され、近年は公共を中心に事業を展開してきた。今回、グループのコンサルティングビジネスのさらなる強化のため、吸収合併を行う。
合併により、FRIの高度なコンサルティングノウハウと、富士通のテクノロジーソリューションを組み合わせ、企業の事業企画構想や公共政策の実現提案といった上流段階から包括的なサービスを提供する体制を構築していく考えだ。
また、FASYSは金融機関向けシステムの開発およびサポートを目的に1991年に設立し、近年では金融機関に限定せず他業種へ事業領域を広げている。その中で多様化する顧客ニーズへの対応や社会課題解決に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)やAIをはじめとしたテクノロジーの活用など、事業環境の変化に対応したビジネスを一層加速するという。
磯部氏は「常に事業ポートフォリオの見直しと同時に事業効率を向上するために力を結集している。FRIはコンサルを中心としており、Ridgelinezの設立時に民需系は集約したが、公共系はFRIに残していた。経済環境の変化や官公庁・自治体の取り組みが変化しており、吸収することで公共系ビジネスに対する戦闘力を高める。FASYSは個別に分散ロスしているよりは、金融ビジネスとして一体化して効率を向上した方が望ましいため吸収する。ドラスティックの事業変革ではなく、同じ領域のパワーを結集して体制を整える一環だ」と説明していた。