NECは10月28日、6月から9月にかけて無償利用可能な人工衛星画像とAIを活用し、札幌市水道局が管轄する水管橋の異常点検に関する実証実験を実施したことを発表した。その結果として、ドローンを用いた同様の点検作業と比べ、撮影コストをかけず多頻度な計測を実現したという。
水管橋の異常点検に関する課題
現在、国内では経年劣化が進行する橋など道路構造物において、5年に1度の定期点検が義務化されている。しかし、全国72万の橋を点検する必要があるため、担当する専門家の人員不足や点検の効率化、点検に必要な特殊機材の調達、作業の長期化による費用増加が課題となっている。
各水道事業体が管理する水管橋においても、目視もしくは同等以上の方法による点検が定められているものの、長大な水管橋に接近し、目視点検することは困難なため、特殊車両での高額な作業費用が発生している。
近年では、ドローンを用いた点検も検討され始めている一方で、操縦に長けた作業員の確保、それに伴う作業費用の圧縮が課題となっている。
実証実験の概要
上記の課題を受け、NECは落橋につながる重大損傷を発見する技術をベースに、無償利用可能な人工衛星画像を用いたリモートセンシングとAIを組み合わせた、水管橋の異常な変位を発見する技術を開発した。
今回の実証実験では、同技術を用いて、札幌市水道局からフィールド提供を受けた豊平川第2水管橋(全長234m、支間長117m×2径間)で点検が行われた。結果として、水管橋の鉛直変位および橋軸変位を誤差5ミリメートル程度で計測できること、水管橋に垂れ下がりの傾向はないことを確認した。
加えて、シミュレーションで疑似的に発生させた3ミリメートル以上の垂れ下がりを同技術で検知できることを検証し、水管橋の異常発見に活用できることを確認している。
今回は、12日間隔で観測される無償利用可能な人工衛星画像を使って2016年以降の8年分の分析ができたことから、ドローンを用いた同様の点検作業と比べて、撮影コストをかけず多頻度な計測を実現したという。