サントリーは10月18日、同社の物流の取り組み説明および浦和美園配送センター見学会を実施した。

物流の2024年問題と言われる、長距離トラック輸送のドライバー不足に伴う物流インフラのひっ迫については大きな社会課題となっており、サントリーグループではこれまでもさまざまな対応に取り組んでいる

今回の説明会では、同社が進めている物流取り組みについて説明するとともに、トラック待機時間の大幅削減を実現する物流拠点である「浦和美園配送センター」を紹介した。

説明会にはサントリーホールディングス サプライチェーン本部 物流調達部 部長の塚田哲也氏、サントリーロジスティクス 埼玉支店 リーダーの小島達也氏が登壇した。

  • トラック待機時間の大幅削減を実現する物流拠点である「浦和美園配送センター」

    トラック待機時間の大幅削減を実現する物流拠点である「浦和美園配送センター」

飲料業界が抱える物流課題を解決する

最初に登壇した塚田氏は、「物流を取り巻く環境と課題意識」と「サントリー飲料における物流の取り組み」について語った。

サントリーがメインの商材として扱う「飲料」は、トラック輸送量が多いカテゴリーとして分類されている。主要品目別トラック輸送量を見てみると、令和元年度の輸送量は2億トン以上で、これは上位5位に入る総量となっている。

  • 主要品目別トラック輸送量(トンベース・平成31年度/令和元年度) 出典:「数字でみる物流2021年度」より経産省作成

    主要品目別トラック輸送量(トンベース・平成31年度/令和元年度) 出典:「数字でみる物流2021年度」より経産省作成

その中で、サントリーの飲料事業は市場の伸びを大きく超える形で成長しており、2003年と2023年の出荷数量は約60%の増加となっている。また市場全体が18億ケースに対して、サントリーが4.5億ケースであることから、同社のトラック輸送量が業界トップクラスであると推定しているという。

「飲料は生活必需品の側面があるものの、他の食品業界と比べて製品の重量が重く、また物量も多いという特徴があります。そのため、輸送に多くのトラックを要してしまうという特性があります」(塚田氏)

  • サントリーホールディングス サプライチェーン本部 物流調達部 部長の塚田哲也氏

    サントリーホールディングス サプライチェーン本部 物流調達部 部長の塚田哲也氏

サントリーでは、上記のような物流観点から見る飲料業界の特性を解決し、限られたトラックで効率的に運ぶために「運ぶ距離を短くする」「積載効率を上げて台数を減らす」「ドライバーを待たせない」という3つのポイントで取り組みを進めているという。

「運ぶ距離を短くする」取り組み

この取り組みでは、これまでエリアをまたいで輸送を行っていた輸送について、「エリアごとに製造・輸配送する」という構造に変革することで長距離トラックの輸送量を減らすことを目標としている。

兵庫県のサントリープロダクツの高砂工場では、約250億円をかけて製造ラインと自動倉庫を新設し、機能を強化した。

2026年春の稼働に向けて設計を遂行中で、これが完成すれば関東エリアから西日本エリアへの長距離トラック輸送量を50%削減できる見込みとなっているという。また、長距離トラック輸送量だけでなくCO2排出量も年間3700トンの削減が期待されている。

「積載効率を上げて台数を減らす」取り組み

これまで、サントリーの商品はデザイン重視の容器形状が多かったのに対して、2024年から「GREEN DA・KA・RA」「サントリー烏龍茶」「伊右衛門 濃い味」の3商品に対して積載効率が高い容器形状を採用することで、トラックの台数を4万台から3万6000台にまで削減することに成功した。

これまでは1つのパレット(貨物の載せるための荷役台)に対して35ケースだったのに対して、積載効率が高い容器形状の採用後は1つのパレットに45ケースを積載することが可能となっている。

  • 積載効率が高い容器形状の採用

    積載効率が高い容器形状の採用

「ドライバーを待たせない」取り組み

ドライバーの1日の行程は、待機時間や荷積み・荷下ろし時間という走行以外での拘束時間は1日に5~6時間程度発生し、1日の勤務時間の半分程度の時間が待機時間になってしまっている。

  • ドライバーの走行以外での拘束時間

    ドライバーの走行以外での拘束時間

そのため、浦和美園配送センターでは走行以外におけるドライバーの拘束時間の削減に取り組んでいる。国土交通省が発表した調査データでは、荷物の積み下ろしの順番を待つ時間である「荷待ち時間」と、荷物の積み込み・積み下ろし・倉庫業務にかかる時間を表す「荷役時間」を合計した「滞留時間」において、3時間を超えるケースも少なくなかったという。

しかし、浦和美園配送センターでは、バース(荷物の積み下ろしなどに使うスペース)数の拡充やDX(デジタルトランスフォーメーション)施策などを行うことで、滞留時間の短縮を実現し、平均滞留時間は30分強程度だという。

ドライバーの待ち時間を削減する「浦和美園配送センター」

浦和美園配送センターは、大和ハウス工業と協働で設計された「飲料に最適な仕様」の配送センターだ。自動受付システムの改修を行い、入出庫時にかかる受付から呼び込みの時間を短縮。

伝票発行も自動出力が可能とし、省人化を図っているという特徴を持つ。受付で5~10分程度の時間短縮を実現し、ほかの待機時間を削減をすることにより、一般的な配送センターと比べて約1時間ほど早く退場が可能だという。

  • ドライバーの動線

    ドライバーの動線

また、通常の約3倍規模のバース数を持つことで、どのバースに、どのトラックが入るかをあらかじめ計画することが可能なため、前日のうちに積み込む荷物が準備できる。加えて、バース周辺の仮置きスペースについても通常の2倍以上の規模となっており、積み込む商品を事前に荷集め、荷揃えし、トラックが到着したら、すぐに積み込める状態にしておくことができる。

  • 実際にトラックに荷物を積み込む様子

    実際にトラックに荷物を積み込む様子

実際に浦和美園配送センターを利用するドライバーからは「受付から出発までスムーズ」「倉庫起因で得意先の納品時間に間に合わないということがないので助かる」「待ちがないので、最終が浦和美園だと帰宅時間が分かって嬉しい」という声が寄せられているようだ。

最後に塚田氏は、サントリーグループとして、「ユニ・チャームや大王グループとの共同輸送」「ダイキン工業と共同でダブル連結トラックを活用した往復輸送」などの取り組みも説明した上で、「今後は浦和美園配送センターで得られたトラックを待たせないための知見・ノウハウの他倉庫への展開などを積極的に検討していくなど、個社として出来うる活動を推し進めたい」と今後の展望を語っていた。

なお、個社では対応できない物流課題については、業界での連携や流通の企業との協働なども積極的に検討していく方針だ。