RPAベンダーとして名を馳せたUiPathだが、現在はビジネスプロセスを自動化するプラットフォームを提供している。他のIT製品と同様、同社のプラットフォームにもAIが搭載されている。

そして同社は、自律型エージェントを実現するAgentic AIの開発に注力している。Agentic AIによって実現される自動化とはどのようなものなのか。また、それはわれわれにどんなメリットをもたらすのか。UiPath 創業者兼最高経営責任者 Daniel Dines氏に話を聞いた。

  • UiPath 創業者兼最高経営責任者 Daniel Dines氏

RPAの限界突破に必要な生成AI

Dines氏は、RPAについて「学習させると、人の行動をまねさせることができる。その際、タスクは定型であること、何をしたいのかを明確に説明することが必要になる。日本でも製造業、医療、自治体など、さまざまな業種で利用されている」と説明した。

しかし、「RPAには限界がある。なぜなら、非構造化データを理解できないから」とDines氏。そこで生成AIの出番となるが、生成AIにも課題があると、同氏は指摘した。

「生成AIは2年ほど前に登場し、さまざまな企業が導入しようと試みている。ただし、生成AIには信頼性が低いという課題がある。ビジネスには、決定論的なふるまいが必要」(Dines氏)

現在、生成AIはチャットボットとして利用されるケースが多いが、Dines氏は「チャットボットが出した答えは正しいかどうかの検証が必要。生成AIはパワフルだが、ビジネスを抜本的に変革するものにはなっていない」と話した。

では、抜本的な変革とはどんなものなのか。Dines氏は「生成AIのパワーを自律的に提供できて初めて実現するものであり、われわれはエージェンティックオートメーションと呼んでいる」と述べた。

エージェンティックな世界とは?

UiPathは、ロボティックとエージェンティックによって、ビジネスの変革を起こそうとしている。ロボティックは、これまで提供してきたロボットによるルールベースでシステム化された処理を行う。一方、エージェンティックは、目的ベースで、自主的なアクションや動的な判断を提供する。

  • UiPathが描くロボティックとエージェンティックによる未来

エージェンティックを実現するテクノロジーとして、同社は「Agentic AI」を開発している。Agentic AIとは、さまざまなAI技術、モデル、アプローチを組み合わせることで、データを分析して目標を設定し、それを達成するために行動することができる、自律型エージェントを実現する。

生成AIはアウトプットの文脈や目標を決定するために、人間による入力と指示に依存しており、ロボティックのパワーが必要だという。つまり、生成AIとAgentic AIは異なるタイプのAIとなる。

Dines氏はチケットの予約を例に、Agentic AIおよび自律型エージェントの仕組みを説明した。Agentic AIおよび自律型エージェントが導入された世界では、データがLLMに提供されて組み合わさるという。特定のチケットの予約をLLMが判断し、ロボットとして購買を決定する。

このような仕組みについて、Dines氏は「Agentic AIとエージェントにより、能力を組み合わせて非構造化の世界を理解し、情報を得る。これにより、技術が力を持つようになる。生成AIをエージェンティックに提供することが大事」と説明した。

エージェント・人・ロボットをつなぐ「エージェンティックオーケストレーション」

エージェントはAIのスキルを持ち、自然言語でのコミュニケーション、タスクを達成するためのステップの計画に加えて、プロセスレベルの成果を得るために他のロボットやエージェントと連携を行う。

Dines氏は、エージェントの特徴として、非構造型データを理解できることを挙げた。そのため、エージェントは膨大な量のドキュメントから規則性を理解して、必要なデータを見つけてくることが得意だという。

加えて、エージェントは意思決定において示唆が行える。Dines氏は、クレジットカードや住宅ローンの承認において、エージェントが提案や示唆を行うと紹介した。

ただし、エージェントが決定論的な働きをするには、ガバナンスとセキュリティガードレイルが必要だという。例えば、誰がどのエージェントにアクセスしてよいかなどをコントロールする必要がある。

そして、エージェントが出した答えをロボットで検証し、答えに間違いがないなら全体のプロセスを継続できるという。例外が発生したときは、人が処理を行う。この一連の処理を「エージェンティックオーケストレーションと呼ぶ」とDines氏。

エージェンティックオーケストレーションにおいては、エージェント、ロボット、人とつながっていき、UiPathはそのためのプラットフォームを提供している。

「さまざまな要素を組み合わせることで、自律性が生まれる。SalesforceやSAと共にオーケストレーションする。われわれはよいポジションにいる」(Dines氏)

  • エージェンティックを実現する要素

ユーザーを支援するAIアシスタント「UiPath Autopilot」

Dines氏は、エージェンティックな世界を実現するプロダクトとして、AIアシスタント「UiPath Autopilot」(本稿執筆時点ではプレビュー)を紹介した。UiPath Autopilotには、UiPath Document UnderstandingおよびClipboard AIが搭載されており、あらゆる種類のドキュメントにまつわる手作業を削減する。

例えば請求書を処理する際、チャットで指示を行えば、Autopilotは必要な情報を抽出・分析して処理を行う。また、申請書を登録するタスクの処理が止まったら、管理者に通知が飛ぶが、Autopilotが問題を解決して、自動化を完了する。

また、Autopilotは分析情報からデバッグして、セレクタ(ボタンなどの情報)の解決についてアドバイスをくれる。人間はその解決案を承認すればよい。

Dines氏は「AutopilotはUIベース、APIベースのトラブルシューティングをしてくれるので、メンテナンスコストを大幅に下げられる。これにより、自動化プロジェクトを成功につなげられる」と話した。

さて、同社が掲げるエージェンティックな世界が進むと、人はどうなるのだろうか。

Dines氏は、「人間は意思決定を中心に行う。そのために、ロボットを使い、エージェントに対してルールを作成する。最終的には、エージェントによって多くの仕事が行われるようになり、人間には高度な仕事が残される」と説明した。

「Agentic AI」は顧客とプロトタイプを構築しているなど、まだ初期段階にあり、「たくさんのお客様と協力していいデプロイメントをしていく。スケーラブルかつ信頼できる形で提供する」とDines氏は語っていた。