時価総額は一時2位に浮上
日立製作所が米エヌビディアと連携し、AI(人工知能)を活用した鉄道の運用・保守に乗り出す。世界的に鉄道インフラの老朽化や維持管理コストの増加が課題になる中、日立は安心・安全の〝ソフト路線〟を武器に、独シーメンスや仏アルストムなどの競合がひしめく鉄道分野で攻勢をかけたい考えだ。
これまで日立はセンサーを活用して、鉄道車両やレールの劣化状況などをリモートで監視するシステムを提供してきた。
今回、エヌビディアのAIを活用することで、大量のデータをリアルタイムに処理し、 必要な情報のみをオペレーションセンターに送信する。以前はメンテナンス拠点でデータが処理されるまでに最大10日間かかることもあったというから、処理速度を飛躍的に向上できる。
日立専務で鉄道ビジネスユニットCEO(最高経営責任者)のジュゼッペ・マリノ氏は、「AIの力と日立の先進的な技術を組み合わせて、鉄道事業者のパフォーマンスの向上を支援する」とコメントした。
近年、日立は生成AI分野において、グーグルやマイクロソフトなどと連携。独自の大規模言語モデルの開発はせず、米テック企業大手と組み、個別にカスタマイズすることで顧客へアプローチしようとしている。
生成AIの需要拡大が続くとの思惑から、足元で日立の株価も上昇。9月26日、日立の時価総額は一時トヨタ自動車に次ぐ2位に浮上した。9月30日の終値ベースでも時価総額は約17.5兆円でトヨタ、三菱UFJフィナンシャル・グループに次ぐ3位を維持している。
元日立首脳曰く、「現状分析に長けた日本企業は多いが、これから会社をどうしたいのか、課題事業にどう手を打っていくのか、投資家の質問に真正面から答えられる人が少ない。その点、小島啓二社長は大学院も理学研究科出身だけに、きちんと論理だって質問に答えることができ、投資家のウケもいい」と語る。
もっとも、株価は期待値の現れ。結果が出なければ投資家は離れていく。日立に求められるのは、生成AIを活用した新事業・サービスの創出をうまく利益に結び付ける実行力である。